50バーツ(約245円)の鶏飯を3〜4か月の分割払いで買う。106バーツのタピオカティーを4回払いにする。タイで急速に広がる「後払い(BNPL)」サービスで、こうした少額の買い物まで分割払いにする若者が増え、借金漬けになる例が問題になっている。タイ中央銀行(BOT)は、若年層を中心に返済の滞る借金が膨らんでいることを受け、後払いサービスの規制強化に乗り出す方針を示した。
きっかけは「鶏飯の分割払い」
BOTのウィタイ・ラッタナコーン総裁は6月2日のイベントで、規制強化の方針を明らかにした。問題視されているのは、本来その場で払えるはずの少額の買い物まで、分割払いにしてしまう使い方だ。
総裁が挙げた例は衝撃的だ。1皿50バーツの鶏飯を3〜4か月かけて支払う、106バーツのタピオカティーを4回払いにする、といったケースである。しかも、こうした少額の分割払いには16〜18%もの利息が見えにくい形で上乗せされていることがあるという。気軽な後払いの裏で、知らないうちに高い金利を払わされている構図だ。
若者の半数が借金、4分の1が返済困難
背景には、タイの若年層に広がる債務問題がある。BOTによると、タイではおよそ2,500万人が何らかの借金を抱えている。なかでも20〜35歳では52.7%、つまり半数以上が借金を負っており、この年代の借金の27%が、返済の滞る不良債権になっているという。
そもそもタイは、家計債務の対GDP比が9割前後とアジアでも有数の高さにあり、借金体質が以前から問題視されてきた。スマートフォン一つで手軽に使える後払いサービスの普及は、その傾向に拍車をかけている。社会に出たばかりの若者が、気軽な後払いをきっかけに借金の連鎖に陥る。総裁は「多くの若い消費者が、食べ物から高級品まで、さまざまな買い物の分割払いで借金漬けになっている」と警鐘を鳴らした。
どんな規制が検討されているのか
BOTが検討している新ルールには、いくつかの柱がある。後払いを利用できる最低年齢の設定、分割払いの対象にできる商品の範囲、分割払いにできる最低金額の設定、そして金利の上限規制である。食べ物や飲み物、ごく安価な商品については、そもそも分割払いの対象から外す案も浮上している。
新ルールは現在、意見公募を経て4〜5か月かけて固められ、最終的な枠組みは2026年10〜11月ごろにまとまる見通しだ。後払いそのものは、現金がなくても必要な買い物ができる便利な仕組みでもある。問題は、その手軽さが少額の浪費や高い金利による借金へとつながりやすい点にある。手軽さで一気に普及した後払いサービスに、タイがどこまでブレーキをかけられるかが注目される。