2026年3月25日、プラチュアップキーリーカン県のガソリンスタンドで給油待ちのトラックの車内で運転手が死亡しているのが発見された。燃料危機で全国的に給油待ちが長時間化する中、10時間以上の行列中に命を落としたとみられる。
発見の経緯
フット・ナットチャブット氏(51歳)は運送会社のトラック運転手として働いており、3月25日の朝、プラチュアップキーリーカン県内のスタンドで給油を待つために列に並んだとみられる。スタンドでの給油待ちが10時間以上に及ぶことが常態化していた時期で、行列に並んだまま翌日まで待機するトラックも珍しくなかった。
運送会社のオーナーがフット氏と連絡が取れなくなり、現場を確認したところトラック内で死亡しているのを発見した。死因は熱中症と見られたが、正確な原因は法医学的な検討が必要とされた。
給油待ち10時間以上の実態
タイの燃料危機の深刻さを示す数字として、この「10時間以上」という数字は衝撃的に受け止められた。大型トラックは物流や農業に不可欠な存在で、タイの流通経済の根幹を支えている。燃料が手に入らなければ輸送自体が止まるため、トラック運転手たちは長時間の待機を余儀なくされていた。
当時のタイのSNSには、全国各地のスタンドで長蛇の列を作るトラックや乗用車の写真が相次いで投稿されていた。夜間から行列に並び、翌日の昼ごろにようやく給油できるという事例も報告されていた。
猛暑との複合要因
3月下旬のタイは乾季の終わりにあたり、最高気温が40度を超える日も珍しくない。密閉された車内での長時間待機は、熱中症リスクが非常に高い。トラックのキャビンは日差しを遮るが、エンジンを切った状態では冷房も効かない。
フット氏の死が「給油待ち中の熱中症」である可能性が高いとすれば、燃料危機が直接的に命を奪った事例として、国内で大きな反響を呼んだ。政府に対する批判の声が高まる中、この報道は燃料対策の緊急性を改めて示した。
タイの物流と燃料危機の連鎖
タイの物流業者は軽油(ディーゼル)に依存している。トラック輸送が止まれば農産物の出荷が遅れ、食品の店頭価格が上昇する。また、製造業向けの部品や材料の搬送が遅れれば工場の稼働率にも影響が出る。
今回の死亡事件は、燃料危機が「価格上昇」というレベルを超えて「命に関わる問題」になっていることを示した。政府はその後、物流車両への優先給油措置を打ち出すなど対応を強化したが、供給不足そのものの解消には時間がかかった。