チェンマイ大学医学部は、ロボット支援手術システム「Hugo」を使った生体肝ドナー手術に成功したと発表した。同大はこれを、Hugoを用いた生体肝ドナー手術として世界で初めての事例であり、ロボット支援による生体肝移植としてはタイ国内でも初だとしている。発表は5月、チェンマイで開かれた記者会見で行われた。臓器移植という難度の高い分野で、タイの医療がロボット手術の最前線に並んだことを示す成果である。
「Hugo」を使った生体肝ドナー手術
生体肝移植は、健康な人が自分の肝臓の一部を提供し、肝不全などの患者に移植する手術である。肝臓は再生能力が高く、一部を切り出してもドナーと患者の双方で元の大きさ近くまで回復する。この性質があるからこそ、生きた人からの提供による移植が成り立つ。
一方で提供者は、健康な体に大きな傷を負うことになる。その身体的・心理的な負担をいかに小さく抑えるかが、生体移植の長年の課題だった。今回チェンマイ大が用いたHugoは、医療機器大手が開発したロボット支援手術システムで、執刀医がコンソールから精密にアームを操作する。ロボットを使った肝移植そのものは近年、世界各地の医療機関で試みられているが、同大はこのシステムを生体肝ドナーの手術に用いたのは世界で初めてだと説明している。
ロボット支援が生体ドナーにもたらす利点
ロボット支援手術では、執刀医が3次元の拡大映像を見ながらコンソールに座り、アームを操作する。手元の細かな震えが機械的に除かれ、狭い体内でも器具を自在に動かせるため、開腹手術では難しい精密な操作ができるとされる。
その分、傷口は小さく抑えられる。出血や術後の痛みが少なく、回復や社会復帰が早いという利点もある。健康な体を提供するドナーにとって、傷が小さく回復が速いことは、移植に踏み切る心理的なハードルを下げることにもつながる。血管が複雑に入り組んだ肝臓のような臓器でも、繊細な切離が行いやすくなると期待されている。
タイの肝移植医療の蓄積
チェンマイ大は、タイ国内で生体肝移植を手がける数少ない拠点の一つとして実績を重ねてきた。2025年には、一卵性双生児の間で行う肝移植にタイで初めて成功したことでも知られる。脳死ドナーからの臓器提供が限られるなかで、生体からの移植は救命の重要な選択肢となっている。
今回のロボット支援手術は、そうした積み重ねの延長線上にある。高度な移植医療は人材と設備の両方を要するだけに、その水準は一国の医療の厚みを映す。タイが移植医療で先端的な挑戦を続けていることは、医療を目的にタイを訪れる人が増えるなかで、国の医療への信頼にもかかわってくる。