タイのカオソッド紙が2026年5月3日、夏の猛暑で腎結石(タイ語: โรคนิ่วในไต)の患者が継続的に増加していると医療警告を報じた。同紙が引用したハノイ国立大学医療薬学大学附属病院・泌尿器科のチャン・コン・テ・ルック医師(นพ.เจิ่น กง เท หลึ๊ก)は、オフィスワーカーが主要リスクグループになっていると警鐘を鳴らしている。エアコン下で喉の渇きを感じにくく水分摂取が不足する一方で、汗による水分喪失で尿が濃縮し、カルシウム・シュウ酸塩・尿酸が結晶化しやすくなるためだ。
医師が紹介した事例は33歳男性会社員。激しい腰痛で緊急受診し、検査で大型の腎結石が判明した。エアコン完備の快適なオフィス環境で勤務していたものの、数か月にわたって水分摂取が不足する習慣があり、自覚症状なしに結石を蓄積していたという。「快適だから安心」という油断こそ最大のリスク要因と医師は強調する。
腎結石が夏に増えるメカニズムは、体温調節のための発汗で体内の水分が失われ、結果として尿の濃度が高くなることに起因する。尿中のカルシウム、シュウ酸塩、尿酸の濃度が一定水準を超えると、結晶として析出し、徐々に大きな塊へ成長する。痛みは結石が腎臓から尿管へ移動する際に強烈な腰痛・脇腹痛として現れ、血尿を伴うこともある。重症化すれば尿路閉塞による腎機能障害、感染症の合併、敗血症のリスクまで進行する。
タイの在住日本人にとっての示唆は大きい。バンコク中心部で4月末以降、体感温度が「危険」レベルの42℃を超える日が続いている中、駐在員の多くは涼しいオフィスや車内・自宅で日中を過ごし、屋外滞在は短時間に限られる。これは熱中症リスクは下がる反面、「喉が渇かない=水分摂取しなくていい」という錯覚を生み、知らぬ間に脱水気味になる典型パターンだ。汗をかかない日でも、エアコンの乾燥で体表からは水分が蒸発し続けている。
予防策として医師が推奨するのは、喉の渇きを待たずに定期的に水を飲むこと。1日2〜3リットルを目安に、コーヒーや甘い飲料ではなくミネラルウォーターや麦茶を中心にする。塩分・動物性タンパク質・シュウ酸を多く含む食品(ほうれん草、紅茶、ナッツ、チョコレート)の過剰摂取は控え、カルシウムは食品から適量を摂ることが結晶化抑制に有効とされる。長時間座りっぱなしの仕事スタイルも結石形成を助長するため、1時間に1回は立ち上がる、水を取りに行く動線を確保するなどの工夫が役立つ。
腎結石は一度発症すると再発率が高く、5年以内に約半数が再発するとの報告もある。腰や脇腹に説明のつかない鈍痛や鋭痛、頻尿、排尿時の違和感、血尿などの症状があれば、早めに泌尿器科を受診したい。バンコクや主要都市の私立病院・大学附属病院は超音波検査・CTで短時間に診断でき、駐在員向けに英語・日本語対応の医師がいる施設も多い。猛暑が長期化する4〜6月のシーズンは、屋内で過ごす時間が長い人ほど水分摂取の意識的な習慣化が予防の鍵になる。