タイ教育省は2026年5月2日、新学期開講を前にプラサート・チャンタンルアンウォン教育大臣がバンコク・バンコクノイ区シリラート区のワット・アマリンタララーム小学校を視察し、保護者の経済的負担を軽減する2本柱の対策を発表した。柱の1つは進級時の制服流用やスカウト服フルセット強制購入の廃止など即時実施を全校に厳命するもの、もう1つは教育職員福祉局(สกสค.)主導で学用品を価格統制配布する仕組みだ。プラサート大臣は「協力依頼ではなく実行義務、例外は認めない」と強調した。
対策1の制服・備品関連は以下の5項目で全校に強制実施を求めた。第1に進級・転校した児童生徒は既存の制服を継続使用できる。重複購入の必要性をなくし、家計負担をその場で削減する措置だ。第2に各校は体育服や無地服の着用日を増やし、新規の制服購入頻度を下げる。第3にスカウト・ガールスカウトの完全制服セットの強制購入を禁じ、首巻きと帽子だけを通常制服や体育服に併用すれば代替可能とした。第4にカバンと靴は形状や色の規定を撤廃し、学校紋章の刺繍も不要に変更、節度と実用性の範囲で家庭の判断に委ねる。第5に制服の名前刺繍は従来のフルネームから「学校略字」への変更を進め、コスト削減と個人情報保護法(PDPA)準拠を両立させる。校長には地域事情に応じた追加支援を講じる権限も委譲された。
対策2の学用品価格統制は、教育職員福祉局(สกสค.)が中核機関として教科書・参考書・文房具・必需備品を一括調達し、品質を保ちながら一定価格で全国配布する仕組みだ。保護者は市場価格より安く必需品にアクセスでき、学校間の業者間癒着による価格高騰も防止できる。プラサート大臣は「これらは方針宣言ではなく、家計の経済的逆風が続く時期に教育制度が追加負担を生まないよう実行する誓約だ」と語った。
タイの公立学校は伝統的に制服文化が厳格で、上下セット・体育服・スカウト服・正装・運動靴・革靴・通学カバンが学校指定で定められ、進級ごとに買い換えが必要なケースが多い。子ども1人あたり開講時の出費はバンコク中心部で5,000〜10,000バーツ、地方でも2,000〜5,000バーツに達する世帯がある。今回の対策は5月中旬の新学期開講を控えた時期に発表され、保護者団体や報道各社が「強い実効性を期待する」と歓迎する一方、「現場の運用次第で骨抜きになる」「学校・PTA・指定業者の関係次第」との慎重な見方もある。
在タイ日本人の子育て世帯への影響は、日本人学校に通う場合は基本的にこの規定の対象外(外国人学校独自規定が適用される)だが、現地のタイ公立学校・準公立校・タイ人比率の高いインター系・私立タイ校に通わせる家庭では直接的な負担軽減につながる可能性がある。特にスカウト服フルセット撤廃は、半年に1回しか着ない制服を1万バーツ近く購入する慣行が見直される点で、駐在員家庭の長年の不満に応える形だ。一方、関連報道として5月中旬の開講に向けた2569年学校制服補助金(幼稚園325B〜職業学校950B)の支給スケジュールも併せて確認しておきたい。
教育省は今回の対策に加え、デジタル教材活用、ソーラー発電による教室エアコン化、給食100%補助、追加教育費徴収禁止、ドロップアウトゼロ運動「Zero Dropout」も並行して推進している。プラサート大臣の「全校で例外禁止」発言は、過去の同様の通達が現場で空洞化してきた経緯への反省も含んでおり、6月以降の現場運用と保護者の声を継続注視する必要がある。