タイ・ペッチャブリー県のケーンクラチャン国立公園で4月に発生した1万ライ(約1,600ヘクタール)規模の山火事の発火原因となったガウル(タイ野牛)密猟事件で、ペッチャブリー保護地域第3局は2026年5月1日、容疑者「ナーイ・ムード」ことシティポン氏を国立公園法第19条第6項違反で起訴した。さらに5月2日には容疑者宅をペッチャブリー県ヤーンナムクラットタイ町で家宅捜索し、違法所持の動力チェーンソー2台と各種狩猟用具を押収。CCTVカメラトラップが密猟時刻のオフロード車侵入を記録していたことが決め手となった。
捜査の発端は、ケーンクラチャン国立公園内バンメーカメーイ・ボン地区周辺で4月中旬に拡大した山火事だ。早期段階でガウル2頭が散弾銃で射殺された痕跡が発見され、5,000ライ規模の延焼へと拡大。続く調査でOBT(地方議会)議員が放火でガウルを追い込み狩りする手口が明らかになった。今回のシティポン起訴は、複数の関係者を捜査する過程で炙り出された別の重要容疑者であり、犯行ネットワークの全容解明に向けた拡大捜査の一環となる。
ペッチャブリー支部第3保護地域管理局長のニタット・ヌンソン氏とケーンクラチャン国立公園長のモンコン・チャイヤパクディー氏は、進捗を以下の通り説明した。CCTVカメラトラップで容疑者所有のオフロード車が密猟が発生した時間帯にバンメーカメーイ・ボン地区へ進入する様子が記録されていた。物証として動力チェーンソー2台、ノコバトの死骸1羽、ワイヤー罠などの狩猟用具を押収。火災の発生パターンも分析の結果、稜線沿いに不自然にホットスポットが飛ぶ「人為的放火」の特徴を示していたという。
スチャート・チョムグリン天然資源環境相と国立公園局長のアタポン・チャルンチャンサー氏が出した「密猟者徹底取締り」方針を受け、現場は容疑者複数の同時並行捜査を進めている。タイの世界遺産(自然遺産)であるケーンクラチャン森林群は、絶滅危惧種ガウルや野生象、希少猛禽類が生息する重要保全地域。1頭あたり数十万バーツで取引される野生肉と角の地下市場が密猟の経済的動機となっており、密猟者がガウルを追い込むために放火する手口は林野火災・PM2.5・生態系破壊の三重被害を引き起こしている。
国立公園法第19条第6項は、許可なく野生動物を狩猟・捕獲・殺傷する行為を禁じる包括規定で、最大懲役刑+多額罰金が科される。違法チェーンソー所持はチェーンソー法(พ.ร.บ.เลื่อยโซ่ยนต์)違反として別途立件され、量刑が積み上がる。同公園では先週もエラワン国立公園が山火事対応のためPM2.5 42.9µgで一時閉鎖された他、カオヤイの雄ガウルがワイヤー罠で酸欠死など密猟・火災が連鎖しており、捜査陣は5月以降の乾季残期に向けて警戒を強める。
在タイ日本人にとっては、ペッチャブリーやケーンクラチャン周辺のトレッキング・サファリツアーを予定する場合、現場で公園立入規制が継続する可能性に留意したい。火災延焼区域の植生回復には数年単位の時間が必要で、観光と保全の両立に向け、地元コミュニティと国立公園当局の取り組みは今後も継続する。