タイ中部の世界遺産カオヤイ国立公園の境界付近で、密猟者が仕掛けたワイヤー罠に首を締め付けられた雄のガウル(野生バッファロー)が、獣医チームの救助作業中に息絶える事態が起きた。発生は2026年4月23日。国立公園側は痛ましい事例として公式発表した。
現場はナコンラチャシマ県パークチョン郡ポンタロン地区のコミュニティフォレスト(共有地の森)で、カオヤイ国立公園の境界から約300メートルの地点。ポンタロン地区の郡長官から園側に通報が入ったのをきっかけに、獣医・レンジャー・保護地域管理職員が合同で駆けつけた。
第1保全地域管理局のヨットワット・ティエンスワッディ局長によると、現場ではガウルの首に太いワイヤー罠が深く食い込み、木の根元に絡まった状態で発見された。動物は長時間もがき続けた影響で全身が衰弱しており、締め付けは時間とともに強まっていたという。
獣医チームはワイヤーの切断を優先し救命作業にあたったが、長時間にわたる締め付けで酸欠状態が進み、体力の限界を超えた。ガウルは救助中に息を引き取り、現場の職員を落胆させた。遺体は公園内に搬送され、感染症の拡散防止と衛生管理のため規則に沿って埋葬される予定だ。
カオヤイ国立公園はバンコクから車で数時間の距離にある2005年登録の世界自然遺産で、ガウル・アジアゾウ・ホエジカなど大型哺乳類の生息地として知られる。今回の事故は、公園の境界外とはいえ、野生動物が公園内外を行き来する境界部での違法狩猟が後を絶たない現状を改めて浮き彫りにした。
タイではワイヤー罠は鹿やイノシシなど小型〜中型哺乳類を狙う目的で設置されることが多いが、体重1トン級のガウルが首にかかれば致命傷となる。国立公園関係者は「罠に動物種の区別はない」と指摘し、密猟取り締まりの強化と地元住民への啓発を課題として挙げている。