タイの石油基金委員会(กบน./OFFO)が2026年4月30日、ディーゼル燃料の小売価格を1リットル60サタン(0.60バーツ)値上げすると決議した。主流のB7ディーゼルが40.20バーツ/Lから40.80バーツ/Lに上がる形だ。タイの石油基金は赤字を抱えており、補助金を縮小する形での価格反転が始まった格好だ。前回4月24日のディーゼル40.20バーツへの値下げから6日ぶりの価格反転で、燃料市場の流れが大きく変わる兆しとなっている。
石油基金委員会は今回、ディーゼルへの補助金を1リットル0.74〜0.94バーツ追加する形で、原油市場価格と小売価格の差を埋める仕組みを微修正した。中東情勢による原油価格の継続上昇と、タイ石油基金の累積赤字(4月時点で約620億バーツ)が背景にあり、補助を厚く出し続ける財源が枯渇しつつある現実がある。前日4月29日にはタイ運輸省が航空ジェット燃料JET A-1の物品税を4.726→0.20バーツへ95.8%削減する案を協議していたが、ディーゼルは逆方向の調整となった。
陸上輸送への影響は深刻で、4月29日にタイ陸運省が決めた「BKS+組合バスの料金を1km 3サタン値下げ」の前提(ディーゼル40.20バーツ)が早くも崩れた形だ。トラック業界、Grab・Bolt等のフードデリバリー、長距離バス事業者は燃料コスト増を吸収しきれず、近い将来の運賃改定が避けられない見通しになる。前回4/29のメーデー労働シンポジウムで、配達員の1配送あたり報酬が60〜80バーツから20バーツ前後まで激減した問題が報告されたばかりだが、今回の値上げは現場をさらに圧迫する。
ディーゼル価格の推移をまとめると、2026年は1月の約44バーツから3月に47バーツ前後まで上昇、4月3日にはB7が47.74バーツに達した。その後石油基金が補助を増額したことで4月24日に40.20バーツへ約4バーツ値下げされた。今回の60サタン値上げはこの値下げの一部を取り戻す格好だ。専門家は「石油基金の赤字構造は構造的な問題で、世界原油価格の高止まりが続けば5月中にディーゼルが42〜43バーツに戻る可能性がある」と分析している。
在タイ日本人の生活への影響は段階的に出てくる。家庭用車(ピックアップトラック含む)の給油費用は1回の満タンで約30〜40バーツの追加負担、月の通勤コストで100〜150バーツ増となる計算だ。Grabや配達料金、長距離バス、タクシー料金、生鮮食品の物流コスト増を経由して2〜3週間後の物価に波及する。アヌティン政権の「タイ助タイプラス」(5月登録・6月開始の40%補助スキーム)は買い物のハードルを下げる施策だが、燃料価格上昇による生活費全般の押し上げを完全には吸収できない構造になっている。