タイ労働相のチュラパン・アムロンウィワット氏が2026年4月30日、フードデリバリー配達員(ライダー)とバイクタクシー(วินจยย.รับจ้าง)合わせて20万人超を、2569年末(2026年末)までに社会保険制度に加入させると正式に表明した。同日にバンコクで開催した安全運転啓発イベント「SAFE DRIVE SAFE LIFE」での発言で、社会保険加入と安全装備配布(ヘルメット贈呈)を組み合わせた政策パッケージとなる。
ライダーとバイクタクシーはタイの代表的な「自由業」(แรงงานนอกระบบ/非正規労働者)で、現在は社会保険第33条(正規雇用者向け)にも第40条(任意加入)にも入らない人が大半を占める。労働省の推計で全国に20万人以上が登録されており、Grab・LineMan・Foodpanda・Robinhoodなどのプラットフォーム配送員と、バンコクの「ウィン」(วิน=バイクタクシー乗り場)で働くドライバーがその大多数を構成する。労働相は「公道を常に走るため事故リスクが極めて高い」と職業特性を指摘した。
これは先日報じた一連の社会保障ニュースの続報の位置づけにある。タイ商工会議所大学の調査では労働者の79.1%が貯蓄ゼロ、月収15,000バーツ以下の98%が世帯平均50万バーツの債務を抱えていることが判明し、ライダーは1配送あたりの報酬が60〜80バーツから20バーツ前後まで激減した。4月29日のメーデー労働シンポジウムでは「ライダー1配送40バーツの最低保証」が労働団体から要求されたが、プラットフォーム側は応じておらず、政府による社会保険カバーが現実的な救済手段となる。
社会保険加入によって、配達員・バイクタクシーは事故時の医療費補助、休業時の所得補償、老齢給付、葬祭費などのセーフティネットを得る。タイの社会保険には「第40条任意加入プログラム」があり、月70・100・300バーツの3パターンから選べる仕組みだ。労働相が示したスケジュールはこの第40条への自動加入を促す方向と見られる。先日も社会保険局では会計検査院が固定資産40億バーツの行方不明を指摘した経緯があり、加入者が増える前に組織のガバナンス改革も問われる。
在タイ日本人にとっては、Grab・LineMan等の配達アプリを日常的に使う層、バイクタクシーで通勤する層に直結する。ライダーが社会保険に加入すれば、事故時の対応や経営安定化を通じて、配送品質と安定供給に間接的にプラスとなる可能性がある。一方で、社会保険料負担が配送料金に転嫁されるシナリオもあり、Grab代金の値上げにつながる懸念もある。年末までの政策実施スピードと、プラットフォーム側との負担分担協議が当面の焦点となる。