タイ商務省の貿易政策戦略局が2026年2月、全国6,469人を対象に実施した世論調査で、借金を抱える国民の割合が62.44%に達したことが分かった。前回調査の50.99%から12ポイント以上の急増で、生活費危機が家計を直撃している実態が浮かび上がった。同局スポークスパーソンのナンタポン・ジラルートポン氏が発表した。
借金が増えた最大の理由は、日常の生活費(食費・光熱費・燃料費)の上昇である。商務省は「2026年は国民の家計運用がより慎重になる傾向がみられるが、収入の不安定さと不可避の支出が、引き続き家計を圧迫する要因として残る」と分析している。
職業別では、公務員・農家・フリーランス(個人事業主)の3グループで借金保有率がとくに高い。意外なのは収入別の傾向で、収入が高いグループほど借金保有率も高くなっており、月収50,000バーツ超の層が最も負債を抱えていた。次に多いのが月収10,001〜50,000バーツ層で、低所得層よりも中・高所得層のほうが借入をしている構図が示されている。
月々の返済負担は平均5,000バーツ前後。タイの賃金水準を考えると、月収20,000〜30,000バーツの世帯にとっては可処分所得の2割前後を返済に回している計算で、家計の余裕を大きく削っている。
特徴的なのは、学生層がオンラインローン利用で首位を占めた点だ。スマートフォン経由の即時融資型サービスが普及し、与信プロセスが短い分、若年層が日常費用や学費の穴埋めに気軽に借りる構図が広がっている。返済能力の見通しが弱いまま借入が積み上がりやすく、将来の信用情報への影響を懸念する声も出ている。
タイは住宅ローン・自動車ローン・クレジットカードに加え、ここ数年で分割払いやオンラインローンが一気に普及し、家計部門の負債総額が継続的に拡大してきた。今回の62%という数字は調査ベースだが、過去十数年で家計が「現金で買う」から「借りて買う」社会へシフトした転換点を示すものといえる。在タイ日本人にとっても、家賃・学費・医療費の支出構造が現地と同じ環境にあるなら、無理のない返済設計を改めて見直すタイミングだろう。