サムットプラカン県バンサオトン郡バンサオトン町のバンプリーニュータウン公社住宅地区で2026年4月29日午後6時、31歳の男ヨンユット氏(苗字伏せ)が走行中の従業員送迎バスに自ら飛び込んで衝突する事件が起きた。男は「兵役中の訓練で殴られて脳に衝撃が残っている」と主張し、警察に拘束された後に病院搬送先の看護助手に暴行を働いて再犯となった。
通報を受けたサムットプラカン県救急センターはルアムカタンユー財団のボランティアとバンサオトン署の巡査と連携して現場に急行。ヨンユット氏は身体に擦り傷と頭痛があり、バンナー2病院に搬送された。衝突を受けた送迎バス(バンコクナンバー)はフロントガラスが大破。バスは工場・オフィスビル勤務者の送迎用で、停車中もしくは低速走行中に正面から飛び込まれたとみられる。
男は警察の聴取に対し「現役のとき暴力的な訓練を受けて脳が損傷し、幻聴や興奮状態になることがある。昨夜は寝不足だった。酒は飲んでいない」と説明した。タイは1905年から続くくじ引き徴兵制度(タイ語で「เกณฑ์ทหาร」)を維持しており、毎年4月にくじ引きで20歳の男性から数万人を徴兵している。タイ陸軍内での暴力的訓練・先輩兵士による私的制裁・新兵の死亡事例は過去にも何度も人権問題として取り上げられてきた。
ヨンユット氏は搬送先の病院でも興奮状態が続き、看護助手(タイ語でเวรเปล=寝台運搬員)に暴行を働いた。これが「再犯」(ก่อเหตุซ้ำ)として記録される展開となり、警察は精神状態の鑑定を行ったうえで処分を決める方針だ。同様の「徴兵後にメンタルが壊れた元兵士による事件」はバンコク郊外で年に数件発生しており、タイ社会の構造的な問題として認識されている。
在タイ日本人にとっても、サムットプラカン・パトゥムターニー・ノンタブリといった工場集積地のニュータウンは、日本人駐在員家族のコンドミニアムや日系企業の通勤バス路線が走るエリアと重なる。今回のような飛込み事案は予測困難で、送迎バスの運転手・乗客にとっても無関係とは言えない。タイの徴兵制度・元兵士のメンタルヘルス対応・公共空間での発作対応の3点は、日本側からも注視すべき社会課題と言える。