タイ社会を震撼させた連続毒殺事件「アム・サイアナイド」(แอม ไซยาไนด์)の主犯サララット・ランシウッタパン(通称アム)に対し、2026年4月30日に2件目と4件目の判決が出た。いずれも死刑が言い渡されたが、被告の供述が捜査に有用だったとの理由で終身刑に減刑された。タイの裁判所が連続殺人犯に対して短期間に複数の死刑判決を出すのは極めて異例で、社会的注目度の高い判決となった。
2件目の判決は警察大尉カンダ・トライ氏(通称ผู้กองนุ้ย)の毒殺事件。2022年8月10日にナコンパトム県でアムと共に貸金業を営んでいた被害者が「循環器系・呼吸器系不全」で急死した案件だ。当時、夫は死因を疑わなかったが、その後にアムが他の被害者を毒殺したことが発覚し、捜査が拡大する過程でこの事件もアムの犯行と特定された。アムは死亡前に被害者にシアン化物入りの食事を摂らせた疑いで2025年に追加起訴されていた。
4件目の判決対象は教師プッサディ氏(通称ครูอ๊อด)39歳の毒殺事件で、2022年11月20日に発症した「白血病症状+循環器系不全」が真の死因はシアン化物中毒であったと裁判所は認定した。これも死刑→終身刑の同じパターンとなった。アムが扱った高利貸しグループには6人のメンバーがおり、被害者の多くがグループ内部の関係者だった点で、組織的な殺人事件としての様相を呈している。
アムは2026年4月時点で警察官「プー」殺害事件(2023年4月1日)で既に死刑→終身刑の判決を受けて服役中だった。今回の2件目・4件目を加えると、判決済みの事件だけで3件で連続して同一被告に死刑が言い渡されたことになる。タイ刑法では実質的にすでに終身刑の状態だが、減刑のたびに被害者遺族は「殺された家族の数だけ判決が必要だ」と訴えてきた。総被害者は14人とされ、うち8件で確認、1件が調査中となっている。
共犯としてアムの元夫であるウィトゥーン元警察副司令官が懲役1年4ヶ月(捜査協力で減刑)、関与した弁護士タンニチャが懲役2年(証拠隠匿・被告幇助で執行猶予なし)の判決を受けている。在タイ日本人にとっても、この事件は「シアン化物(青酸カリ)が個人の手で入手・使用され連続殺人が成立する」というタイの規制環境を考えさせる事件として記憶される。残る毒殺被害者の判決は今後数年かけて順次出される見通しで、アムの裁判は連続的に続く。