オーストラリア連邦警察(AFP)バンコク支局からの情報提供を受け、タイ警察捜査局は2026年4月29日、児童に対する複数の性犯罪で有罪判決を受け保護観察中だった57歳のオーストラリア人男性「リチャード」容疑者を、コンケン県ムアン郡バンペット町の自宅で逮捕した。男性は出国禁止下にあったが、タイ人の妻に会いたい一心で1人でボートを操り、約5か月かけてタイへ密入国していた。
容疑者はオーストラリアの裁判所で児童に対する複数の性犯罪で有罪判決を受けており、出国禁止を含む保護観察下にあった。妻と離れて暮らす状況に耐えられず、合法的な渡航手段を取らずに自前のボートで5か月かけて単独航海し、タイへ入った。
逮捕にはタイ警察捜査局副長官のパッタナサック・ブッパスワン警視長が指揮を執り、捜査3課課長スリヤサック・ジラワット大佐、同課のエカシット・インタロー警佐らが入国管理局と合同で踏み込んだ。AFPバンコク支局からタイ捜査局への正式な協力要請が起点となっている。
男性にはインターポールの「グリーンノーティス(C-218/4-2026、2026年4月9日発行)」が出されていた。グリーンノーティスは、性犯罪歴があり再犯のリスクが高いと判断された人物について、各国の警察に警戒・追跡を促す警告通知である。国際指名手配を意味するレッドノーティスとは別系統で運用されている。
タイ側は逮捕と同時に、容疑者のタイ滞在許可を取り消した。さらにオーストラリア政府側はパスポート自体を取り消しており、現状では合法的な滞在も帰国もできない状態に置かれている。今後はオーストラリア側への引き渡しに向けた手続きに進む見通しだ。
タイは観光ビザの簡便さ、生活コストの安さ、東南アジアの交通拠点としての位置づけから、海外で前科のある人物の「身を隠す先」として選ばれやすい。今回のように単独でボートで5か月かけて密入国してくるケースは異例だが、「英語圏で保護観察中の児童性犯罪歴のある男性がタイ人妻のもとへ逃げてくる」という構図自体は過去にも繰り返し報じられている。AFPからタイ捜査局への直接の協力要請ラインが今回も機能した形で、タイの逃避先化への警戒は一段強まりそうだ。