タイ警察庁の報道官は2026年4月28日、シンブリ県プロムブリ警察署の交通分隊長スパミット・プアンプラセート警察官に「報道官イチオシ(โฆษกยกนิ้ว)」賞を授与した。スパミット警官はSNS上のアドミンによる長時間の挑発配信を受けながらも職務を投げず、結果として脳出血で倒れた経緯があり、警察組織として彼の忍耐と職務遂行を讃える表彰となった。
事件の発端は2025年3月、ハイウェイ32号バンモ区での速度違反取締まり中。FacebookページのアドミンチームがTシャツに「不法検問所戦士の会(สมาคมนักรบด่านเถื่อน)」と書かれた服装で現場に現れ、スパミット警官のすぐそばに撮影用カメラを設置してライブ配信を始めた。挑発的な発言は約30分続き、その間スパミット警官は職務を放棄せず取締まりを継続したが、現場で意識を失い、警察病院に搬送された。診断結果は脳出血で、右半身に麻痺の症状が出たという。
事件は当時、タイ警察にとって衝撃的だった。妻は2025年3月24日にサイバー犯罪捜査局へ正式に被害届を提出し、SNS上の「警察への挑発」を職務妨害として立件できないか調査が始まっていた。タイのSNS文化では「不正検問の暴露」を名目に取締現場をライブ中継する個人配信者の存在が増えており、警察側の精神的・身体的負担が社会問題化している。
警察庁長官は今回の表彰式で、スパミット警官への治療と福利厚生を最大限に整えるよう関係部署に指示した。本人の容体は回復傾向にあるとはいえ、長期的なリハビリが必要な状態とみられている。表彰式には家族も同席し、組織として個人を支える姿勢が示された。
日本人の感覚では「警察官が職務中にライブ配信で挑発されて脳出血」という事態自体が衝撃的だが、タイではSNSで警察を晒し上げる文化が市民側から強く、「不正取締の摘発」という大義の裏で個人攻撃に近い形になることも少なくない。スパミット警官の表彰は、警察組織としてSNSハラスメントに毅然と対応する姿勢を示すと同時に、現場の負担を社会全体で考えるべき契機となっている。