タイ南部パッタルン県ムアン郡チャイブリ区で2026年4月28日、母親が「病院に連れて行きたい」と警察に救助を依頼した37歳の精神疾患の男性が、駆けつけた警察官をナイフで刺傷する事件が発生した。被害を受けた警察官は防弾チョッキの下に1ヶ所負傷したが命に別状はなく、加害者は別働隊によって制圧された。母親は涙ながらに「治療費が高くて何度も家庭で抱え込まざるを得なかった」と語っている。
通報を受けたのはパッタルン市警察。母親の説明によると、37歳の息子は長年精神疾患を患い、自宅で暴れる場面が繰り返し起きており、これまでも警察への通報で対応してもらっていた。前夜は息子が寝室で一晩中独り言を続け、いつもと違う様子だったため、母親が「病院搬送を手伝ってほしい」と110番した。
到着した警察官たちは、息子が寝室に立てこもったままドアを開けない状況を確認。母親の依頼でドアを破壊して中に入る方針を取った。ところがドアを破ろうとした瞬間、息子が突然ドアを開けて飛び出し、刃物を手に警察官に向かってきた。
刺されたのはパッタルン市警察分隊のソムポーン・ケトデーン警察官。腹部左下、防弾チョッキの下に1回刺された。ほかの警察官が即座に被害者を病院へ搬送し、初期診断では命に別状はなかった。別の班が加害者を取り押さえ、それ以上の混乱を防いだ。
事件後、母親は「息子をただ病院に連れて行きたかっただけ。家にずっと閉じこもって治らないので、家族として何度も助けを求めてきた」と涙を流して訴えた。タイの精神医療は入院治療の自己負担が大きく、所得が低い家庭は通院・入院を継続できないケースが少なくない。日本の感覚では「保健所と精神科救急が動く案件」と感じる場面でも、タイでは家族が警察に依頼して身柄を病院に連れて行く流れになることが多く、今回のような悲しい事故の温床となっている。