タイ農業協同組合省のスリヤ大臣が4月27日、「スーパーエルニーニョ」(Super El Niño)への対策として4つの戦略を打ち出した。猛暑と雨量減少が農業を広範に直撃する見通しに対応するもので、人工降雨や作物転換などを動員し、全国の農家を支援する。
4戦略は「貯水・補充・転換・監視」を軸に編成された。第1の水管理(Water Management)では王立灌漑局が主要ダムを厳格管理し、生活用水を最優先したうえで、収穫待ちの農地に向けて灌漑水路への配水を計画する。第2の人工降雨(Rainmaking)では降雨・農業航空局が干ばつ常襲地に機動部隊を配置し、気象条件が整い次第ダムへの水補充と森林・農地への湿度供給を即時実行する。第3の作物転換(Crop Substitution)は短期・低水使用で市場のある作物への切り替えを推奨し、立ち枯れによる損失を抑える。第4の早期警報・救済(Early Warning & Relief)は農業災害監視・解決センターが担う。
事務次官は「全部局が即応態勢にある」と報告。横断的な特別対策チームを発足し、雨切れと干ばつの動向を密に追跡する。「ピルナラート農業サービスセンター」(Pirunraj Agricultural Service Center)アプリを通じてOne Stop Serviceを提供し、緊急時の家畜避難や省庁ボランティアの動員、気象・灌漑データの省庁横断統合といった仕組みも整える。
タイ全国ダムの利用可能水は4月時点で45%まで低下し、中部・東部は40%割れで水不足危機が顕在化している。政府はすでに5,000億バーツの緊急借入政令を検討し、戦争とスーパーエルニーニョの両方に備える方針も打ち出していた。今回の4戦略はこうした財政・水資源対応に、農業ピンポイントの実行策を重ねる形となる。
タイ国内の試算では、エルニーニョが本格化した場合、主要5作物の生産だけで2,300億バーツ規模の被害リスクが見込まれている。雨量への依存度が高い作物の収量低下は、国内の食品物価のみならず通貨や関連産業の収益にも波及する。在タイ日本人にとっても、米やフルーツの店頭価格、輸入品の物流コスト、観光地での水利用などに、夏以降ジワジワと影響が及ぶ可能性がある。