タイ燃料給油所代理店協会(PDA)が4月27日までに、エカナット工業エネルギー相宛に書簡を送り、燃料価格の「事前大幅調整告知」方式の見直しを要請した。1バーツ/L以上の値動きを事前告知する現行運用が、消費者と給油所の双方に「ショック対応」を強いて、市場行動を歪曲しているとの主張だ。
PDAが指摘する歪みは2方向に出る。値下げ予告が出ると、消費者は給油を控え、給油所は損失回避で在庫を急ぎ捌こうとする。値上げ予告が出れば、逆に消費者が殺到給油、給油所は急いで仕入れ追加する。この行動が需給バランスを崩し、製油所・配送・給油所まで全工程に圧迫が波及する。
給油所側の構造はもっと厳しい。PDAによると、給油所の小売マージンは1リットルあたり0.90バーツ程度の薄利。1バーツ単位の急変動が起きれば、在庫タイミング次第で1日でマージン全部が吹き飛ぶ計算となる。「値下げ前夜の在庫」「値上げ後の品薄」のいずれも給油所にダメージが集中する仕組みだ。
PDAは石油基金理事会(KBN)宛にも同文を送付し、価格調整方式そのものの見直しを求めた。「事前告知の幅を圧縮する」「告知から実施までの時間を短くする」「市場参加者の行動が極端に振れない設計に変える」といった案が今後の議論対象となる見込み。生活費負担軽減という方針は支持しつつ、実装手段の修正を求めている。
タイは中東紛争由来のエネルギーコスト上昇に対応し、ディーゼル価格を1週間で複数回引き下げるなど、頻繁な価格調整を続けている。一方でエカナット工業相がDSIに6油倉庫を告発するなど、サプライチェーンの不正対策も並走中だ。今回のPDA書簡は、政策意図と現場運用の間に生じた「実務歪み」を是正する声として、政策修正の触媒になる可能性がある。
ガソリンスタンドの店頭価格は、在タイ日本人の家計にも直接響く。値上げ前夜に長蛇の列、値下げ後に在庫切れという光景は、現場では既に常態化しつつある。エネルギー省の判断次第では、価格調整の透明性と頻度のバランスが見直され、結果として「予想可能な価格運用」に近づく可能性がある。