タイの大学入試制度TCAS(Thai University Central Admission System)が2027年から大幅に変わる。ヨシャナン・ウォンサワット副首相兼高等教育・科学・研究・イノベーション省(MHESI)大臣と、タイ大学評議会(CUPT)会長のウィレート・プリワット教授が4月26日に共同記者会見し、家庭の経済負担軽減と機会平等を打ち出した「TCAS70」の柱を発表した。在タイ日本人家庭でタイの大学進学を視野に入れる場合、特にPortfolio選考(1次)と試験料が大きく動く。
会見で打ち出されたTCAS70の核心は4本柱だ。1つ目はTGAT/TPATとA-Levelの主要科目を最大7科目まで無料化する。2つ目は3次選考(Admission)で最大7校・学部の志望登録費を無料にする。3つ目は試験料の値上げを1年先送りし、家庭の出費を抑える。4つ目は教育公平基金(กสศ.)登録生徒のPortfolio応募料を25%減免する。これら4つを組み合わせることで、地方や低所得層の生徒でも全国の主要大学に応募できる入り口を大きく広げる。
特に注目はPortfolio選考の改革だ。タイの大学入試では1次の「Portfolio」(活動実績ファイル提出による選考)が定着する一方、保護者が業者に有料で代行作成させる慣行が広がり、本来の趣旨である「生徒の主体的活動の評価」が形骸化していた。新制度では「TCASFolio」と呼ぶ標準ポートフォリオシステムを全国共通で採用し、活動データは「TCAS Verified」で実施機関(学校・コンテスト主催者など)が直接認証する仕組みになる。代行業者が偽造した活動を載せられない構造で、ウィレート教授は「美しい政策が子どもの実力を削るような形にしてはならない」と述べた。
さらにCUPTは大学側にPortfolio選考の入学枠を平均30%以下に抑えるよう要請した。Portfolio偏重で他選考に進めない生徒が出ないよう、5方式(Portfolio、Quota、Admission、Direct Admission、Additional)に枠を分散する狙いだ。ウィレート教授は「『5回ある』と言われるが正確には5方式で、回数ではない」と整理し、これからも年ごとに見直しを重ねると強調した。
スケジュールも前年から大きく動く。TCASシステム管理者のチャリー・チャラーンラッブ准教授によると、過去2年は北部洪水で試験を2回実施せざるを得なかった反省から、2027年は1月に1回の試験に統一する。TCAS70の利用登録は2026年7月15日から開始、Portfolio選考は同年8月15日から大学ごとの個別システムで受付開始。3次選考(Admission)は2027年5月7〜11日にmyTCASで受付、追加ラウンドは5月12〜13日に行われる。ただし追加ラウンドは無料化の対象外で、登録費は通常通り発生する。
答案再採点請求の費用は据え置きで、100バーツ/科目・最大300バーツのまま。CUPTはこの部分を改革対象から外した。
タイの大学進学費用は決して安くはない。TGAT/TPATは1科目140バーツ前後、A-Levelは200バーツ前後で、7科目フルに受けると1500バーツ規模。さらにAdmission登録費が志望ごとに数百バーツかかるため、低所得層では試験そのものを諦めるケースも少なくなかった。今回の最大7科目無料化は、教科を絞らずに進路の幅を確保したい家庭にとって直接の恩恵となる。
在タイ日本人で子どもをタイの大学に進学させる場合、TCASは国際バカロレア(IB)資格や海外高校卒業者向けの「インターナショナル・プログラム」と同じ手続きの中で扱われ、Portfolio制度の改革は現地校・インター校在籍生にも影響する。Portfolio提出の標準化(TCASFolio)が始まると、活動を学校通じて事前に登録しておく必要が出る。日系インター校や駐在員家庭の進路担当は、2026年7月のシステム稼働前にデータ入力フローを確認しておきたい。
ヨシャナン副首相は「子どもたちが希望と夢を持てるよう、不平等を減らし、大学の競争力を底上げする」と述べた。試験料無料化は2027年1月の試験から本格適用される。