バンコク警察総監(ผบช.น.)のサヤーム・ブンソム警察中将は4月26日、バンコク市内のニミトマイ警察署とブンクム警察署の管轄区域で違法賭博場が摘発された問題を受け、両署の監督責任を問う内部調査委員会の設置を命じた。摘発を主導したのは警察ではなく、内務省地方行政局の特殊作戦部隊だった。地元警察が「監視を怠った可能性」が公式に問題視される異例の構図となっている。
突入を主導したのは内務省地方行政局法律執行作戦センターのロンナロン・ティップシリ所長率いる特殊作戦部隊だ。バンコク市内のニミトマイ警察署管内とブンクム警察署管内それぞれにある違法サイコロ賭博場「ハイロー」2か所を同時に急襲し、参加していた男女100人以上を一斉に逮捕、現金や賭博器具など計数百万バーツ相当を押収した。
タイの賭博文化は「ハイロー」(3つのサイコロを使った高低当て)が古典的人気で、市民から地下組織まで幅広く参加する。だが法的には公営宝くじと一部のレース以外は全て違法で、参加者にも罰金が科される。今回は地区別の警察署が放置していた疑いが濃く、内務省が「警察より先に動いた」点で警察組織の体面に関わる事案となった。
サヤーム警察総監は会見で、責任地区の管区長であるプラソン・アーンマニ警察少将(バンコク第3管区)とカンパナート・アルンキリーロート警察少将(同第4管区)に対し、両署の対応を精査する事実関係調査委員会を立ち上げるよう指示した。委員会は「賭博場が地域で営業されていたにもかかわらず、警察が監視を怠っていなかったか」を中心に調べ、放置や怠慢が認定されれば懲戒処分を含めて検討する。場合によっては署員の異動措置も視野に入る。
総監は「ソンクラン期間中に警察が祭りの取り締まりで手いっぱいになる時期を狙って、違法業者が開店した可能性がある」と推測も交えた。タイの警察はソンクランの危険な7日間(4月11〜17日)に交通違反取締を最優先する慣行があり、市内警察署の人員はその間に分散される。今回の賭博場が4月後半まで気付かれずに営業を続けていたとすれば、警察と業者の間で何らかの調整があったか、まったく目をつぶっていたかのどちらかになる。
タイでは違法賭博場の摘発はしばしば警察官の汚職問題に発展する。賭博場が長期営業できる背景には、地区警察への「みかじめ料」のような構図があると指摘されてきた。今回内務省が先に動いた点について、市民の間には「警察自身では止められなかった」という見方が広がりつつある。先に書いた内務省主導の100億バーツ規模ノミニー摘発も同じ流れにあり、警察と内務省の取り締まり主導権争いが目立つ局面に入っている。
調査委員会の結果次第で、両署の上層部が左遷・異動・懲戒の対象になる可能性がある。バンコク警察総監は全署に対し、賭博取り締まりを「厳格に」継続するよう改めて指示した。
在バンコクの日本人にとっては直接の被害があるニュースではないが、ソンクラン明けに地区警察の人事が動く流れと、市内の違法賭博場が想像以上に開いていた事実は記憶しておきたい。バンコク市内のマンション・コンドミニアム周辺で見慣れない人の出入りが急に増える地域がある場合、市民通報番号191で連絡することは合法的な対応として警察に推奨されている。