タイ南部パッタルン県シーナカリン郡ラムシン区で2026年4月25日、地元の村長アディサック氏が男性をカブトムシ窃盗の容疑で「逮捕」したとして、後ろ手錠でマンゴーの木に縛りつけ、赤蟻の卵巣4個を頭に押し付けながら4時間以上にわたって拷問する事件が発生した。被害男性の母親と叔母が警察に通報して介入を要請、警察は当初検討していた2罪状に加え、監禁罪と拷問罪まで視野に入れた追加立件を進めている。
事件はパッタルン県シーナカリン郡ラムシン区の住宅近くで起きた。アディサック村長は被害者であるスーテープ・チューンマーク氏を「カブトムシを盗んだ」として捕まえ、自宅敷地のマンゴーの木に後ろ手錠で固定。その状態で殴打し、近くの森から取ってきた赤蟻の卵巣4個を頭に押し付け、約4時間以上放置した。被害者は赤蟻に頭部を集中的に咬まれ続け、強い炎症と苦痛で意識が朦朧としていたとされる。
通報したのはスーテープ氏の母親と叔母である。家族が異変に気づき、シーナカリン警察署に駆け込み、警察が現場に到着して初めて手錠が外された。警察はその場で村長と関係者から事情を聴き、被害者を病院に搬送した。
シーナカリン警察署のナッタパック警視正は2026年4月28日、本件を「不法侵入」と「傷害」の2罪状だけで処理する見込みは誤報だと否定。母親と叔母から追加で聴取を行い、被害者を長時間拘束した点で「監禁罪(กักขังหน่วงเหนี่ยว)」、赤蟻を使った虐待に対する「拷問罪(ซ้อมทรมาน)」まで罪状に加える方向で証拠を整理していると説明した。
タイの地方では「カムナン(村長)」が地域の自警的な役割を担う慣習が残っており、住民同士の小さな窃盗事件を行政・警察を介さずに私的処罰する場面が後を絶たない。日本人の感覚では「行政の最末端の長が容疑者を私的に拷問する」状況自体が想像の外にあるが、タイの地方部ではこの種の私刑が繰り返し報道されており、今回の事件は赤蟻による拷問という強烈なシーンと相まって全国的な議論を呼んでいる。