タイ最大のエネルギー企業PTT(タイ石油公社)は2026年4月28日、2月28日から続くホルムズ海峡封鎖と中東情勢を受けて、原油・石油製品の調達と在庫管理に関する8項目の対応措置を株式市場に正式公表した。「囤積はしていない」と透明性をアピールし、サプライチェーン継続のための流動性負担として合計2,300億バーツ増を抱える形になっている。
PTTはまずビジネス継続管理(BCM)体制を強化するため「PTT Incident Commandセンター」を社内に設立した。中東情勢で原油タンカーの動きが止まり、世界エネルギー市場の価格変動が激しいなかで、24時間体制で状況を監視し政府機関と緊密に連携する仕組みである。さらに、海外パートナー網を活用して中東以外からの原油調達を強化、価格上昇局面でも国内供給を切らさない方針を貫いている。
具体的な負担はすでに巨額に膨れ上がっている。原油・天然ガス調達の運転資金が約1,370億バーツ増、デリバティブのマージンコールが約630億バーツ増、合計で流動性負担は2,300億バーツを超えた。利息コストも70億バーツ以上増加し、PTTが国内エネルギー安定供給を維持するために抱える財務負担の重さがあらためて浮き彫りになった。
象徴的な事例の一つが、原油200万バレルを積むタンカー「セリフォス号」だ。同船は3月7日にUAEのシャルジャ港で待機を強いられ、4月10日の米イラン停戦合意を経てようやく出港、約1ヶ月遅れの4月21日にタイへ到着した。PTTはこの間、代替の原油調達ルートを国際取引網で確保し、国内給油所の供給が途切れないよう手配を続けた。
PTTは「我々はサプライチェーンの透明性を最優先する」「在庫を意図的に絞って価格を操作することはない」と繰り返し説明し、政府機関への定期報告と社外監査の徹底を約束した。日本人の感覚では「中東で1ヶ月足止めされた原油タンカーが、政府系企業の手でタイ国内給油所まで届く」流れ自体が見えにくいが、タイの場合は航空業界の減便、燃料サーチャージ値上げ、電気料金体系の見直しと並走してエネルギー基盤の負担が続いており、今回のPTT 8措置はその裏側を示す重要な公表となっている。