タイ東部トラート県沖で4月24日、毒海蛇に咬まれて重症化したカンボジア人漁師を救うため、タイ当局が60海里先の遠洋まで高速救助船を派遣する医療避難ミッションを実施した。被害者はタイ領海の南端に位置するコ・クッド島(Koh Kut)南側海域で操業中だった漁船「ピチット・サムット15号」の乗組員で、国籍・国境を越えた人命救助の模範例として報じられている。
通報は同日の早朝、漁船側から入った。乗組員の1人が海上作業中に毒を持つ海蛇に咬まれて重症症状を発症したとの一報で、船長はすぐにタイ側の海難救助ホットラインへ連絡し、緊急医療支援を求めた。
通報を受けたトラート県の海上救助部隊は、コ・クッド島南側の海域へ高速救助船を出動させた。被害者のいる漁船はタイ・カンボジア国境付近の公海に近い位置にあり、救助船は片道60海里(約111キロメートル)の距離を疾走して現場に急行した。
被害者はカンボジア国籍の船員と確認された。海蛇による毒はタイ・東南アジア海域では船員や漁師にとって定期的な脅威で、呼吸困難、筋肉の麻痺、低血圧などが急速に進行する。今回の船員も咬傷後に重篤な症状を訴えており、時間との勝負の救命搬送となった。
タイ側の救助船は被害者を収容し、再び60海里を戻ってトラート本土の病院へ搬送。コ・クッド島にある1次救急・医療体制では対応しきれない重症例のため、本土の総合病院での集中治療が必要と判断されたものとみられる。
タイとカンボジアはトラート県境を挟んで陸海両面で隣接しており、漁業活動は両国の漁船が入り混じる水域で日常的に行われている。国境を越えた海難救助は、両国の合意と実務的な海上協力の積み重ねによって成立する分野で、今回のミッションもタイ側の人道的対応として評価されている。
毒海蛇(主にセグロウミヘビや類縁種)の咬傷治療は、早期の抗毒素血清投与が死亡率を大きく左右する。離島・外洋での被害の場合、空路・海路双方で医療機関への短時間搬送が求められ、タイでは海上警察・海軍・民間救助財団が連携するルートが整備されている。
在タイ日本人の駐在員・観光客にとっても、コ・クッドやコ・チャンなど東部の離島でのダイビングやシュノーケリング中の海生生物による事故は発生する可能性がある。今回のような緊急搬送体制がタイ側で機能していることは、事故遭遇時の回復率に直結する重要な情報となる。