タイ北東部ナコンラチャシマ県(コラート)で、住宅開発中だった敷地の地下から古代クメール時代の砂岩製「プラサート(寺院遺跡)」とみられる構造物が見つかり、考古学者が本格発掘に乗り出した。発見は2026年4月24日前後に報じられた。
現場はナコンラチャシマ県ムアン地区、バンマイ副地区の私有地。住宅開発地として造成を進めていた最中に、地盤内に古い人工構造物があることが判明し、調査の結果、クメール建築様式の「プラサート(Prasat)」の遺構と推定された。地主は発掘作業の継続を承諾しており、今後は考古学チームによる詳細調査と保存対応が進む見通しだ。
タイ東北部(イサーン地方)は、かつてクメール帝国の領土に組み込まれた歴史を持つ地域で、有名なピマイ遺跡(Prasat Phimai、同県ピマイ郡)やプノンルン遺跡(隣接ブリラム県)など、アンコール様式のクメール寺院が多数残る。これらの遺跡は11世紀から13世紀にかけての建造が中心で、当時のクメール王朝の宗教・政治拠点としての機能を担った。
今回のバンマイ地区での発見は、こうした「既知のクメール遺跡マップ」に新たな点を加える可能性のある学術的な出来事となる。ナコンラチャシマ県には、古代から近代にかけての多層的な文化遺産が重なって存在しており、住宅開発や道路建設に伴う工事中の遺跡発見は、国内では数年に一度のペースで起きている。
タイの文化省芸術局(Fine Arts Department)は、こうした遺跡発見を受けた場合、発掘・測量・写真記録を実施したうえで、歴史的価値を認定すれば国指定の遺跡として保全登録する手続きを進める。地主・開発事業者は該当エリアの工事を一時中断する必要があり、補償や用地交渉が付随するケースもある。
現時点で公表されている情報では、遺跡の正確な建造年代、用途(寺院・祠堂・墓地など)、規模については発掘進展を待つ段階。砂岩製の構造物というだけでクメール様式と断定するには追加の様式的分析が必要で、浮彫装飾や梁・柱の配置といった特徴から時代推定が進むことになる。
タイ観光・文化の側面から見ると、クメール遺跡群は東北部観光の大きな柱の一つとなってきた。ピマイやプノンルン、ムアンタム(ブリラム)、コーケー(カンボジア国境方面)などが観光ルートに組み込まれており、新規発見の遺跡が保存・公開される場合、コラート市内に新たな観光スポットが増える可能性もある。
在タイ日本人・駐在員にとっても、東北部のクメール遺跡巡りは週末ツーリングの定番テーマ。今後の発掘進捗によっては、コラート市内のバンマイ地区が新しい見学先として加わるかもしれず、続報が注目される。