政治学者のサティトーン氏は、エネルギー委員会が決定したディーゼル精製マージン1リットル当たり2バーツの引き下げについて「ポジティブなシグナルだ」と分析した。タイではエネルギー業界の大手企業の利益構造に手をつけることは政治的に難しいとされてきたが、今回の措置はその壁を越える一歩だと位置づけている。
同氏が特に注目したのは、政府が「エネルギーの大物」と表現される石油精製大手に対して正面から切り込んだ点である。燃料価格の高騰が国民生活を圧迫するなか、精製段階のコスト構造にメスを入れる判断は、これまでの政権では見られなかった踏み込みだと評価した。
背景には、ディーゼル価格が1リットル50バーツを突破し、漁業や物流など幅広い産業が悲鳴を上げている現状がある。石油基金の赤字は590億バーツに膨らみ、補助金頼みの価格抑制にも限界が見えていた。
サティトーン氏は、今回の決定が物価高をめぐる「ドラマ」を沈静化させる効果も持つと指摘した。エネルギー価格の上昇は国民の不満の最大の火種となっており、政府が具体的な行動で応えた意義は大きい。一方で、精製大手のBCPがマージン協議を欠席するなど、業界側の反発も表面化している。
政府は精製マージンの引き下げに加え、物品税の据え置きや運輸・漁業向け救済策など複合的な対策を打ち出している。学者の評価が示すように、エネルギー大手の利益構造に踏み込んだ今回の判断が持続的な価格安定につながるかどうかが、今後の焦点となる。