タイ警察庁長官キティラット・パンペット警視総監(พล.ต.อ.กิตติ์รัฐ พันธุ์เพ็ชร์)が5月12日、全国のすべての警察署に対して「3か月以内に外国人犯罪と越境犯罪を徹底的に掃討する」緊急指示を出した。広報担当の警視監トライロン・ピウパン副国家警察検査局長(พล.ต.ท.ไตรรงค์ ผิวพรรณ)が公式発表。同指示は、(A)外国人による違法行為、(B)越境犯罪組織、(C)密入国・国境通過悪用、(D)外国人ノミニービジネス、(E)外国人不法就労、を対象とし、3段階の措置(緊急3か月、中期、長期)が組み込まれた包括的な治安強化作戦となる。アヌティン首相政権のフリービザ全カテゴリ整理・ノミニー11,426社摘発と連動した、政府全体の外国人犯罪対策の中核となる。
警察庁長官の3段階措置は次の通り。
| フェーズ | 期間 | 内容 |
|---|
| 緊急 | 3か月 | 「エクスレイ + 動員 + 一掃」(เอกซเรย์ ระดม กวาดล้าง) |
| 中期 | 中長期 | 「根を掘って引き抜く」(ขุดราก ถอนโคน) |
| 長期 | 継続 | 越境犯罪+ノミニー組織の根絶 |
「エクスレイ」(X-ray)は警察用語で、(A)地域の問題点を網羅的に調査、(B)外国人の所在・活動を全数把握、(C)違法事業の特定、(D)容疑者リストの作成、を指す。続く「動員」(ระดม)は人員集中投入、「一掃」(กวาดล้าง)は摘発・逮捕の連鎖実施、と解釈される。
対象犯罪は具体的に5項目だ。
- 外国人による違法行為全般
- 越境犯罪組織(人身売買・薬物・武器・マネーロンダリング等)
- 密入国・国境通過悪用(タイを通過点として周辺国へ)
- 外国人ノミニービジネス(タイ人名義で実質外国人経営)
- 外国人不法就労
タイ警察庁長官の指示は、(A)アヌティン首相の政治的優先順位、(B)連続する外国人犯罪事件(中国人ミンチェン武器庫・バンラムン中国人ポッドケ工場・シラチャ強盗事件等)、(C)観光業の質的転換政策、(D)国際的な評判改善、を背景に発出された。
トライロン副国家警察検査局長の説明では、本作戦は「単なる短期摘発ではなく、根本的な構造改革を目指す」もの。具体的には、(i)外国人事業の合法性監査、(ii)ノミニー会社の解体、(iii)密入国ルートの遮断、(iv)越境犯罪組織のネットワーク解明、(v)国際捜査協力強化、が中長期で展開される。
タイ国民の反応は一定の支持を集めている。最近のパンガン・サムイ島の外国人関与企業11,426社、中国人2人のタイ国民IDカード違法取得などの事件で「外国人犯罪が常態化」という認識が国民に広がっており、警察庁の徹底掃討への期待は高い。
ただし、過剰な摘発による(A)合法外国人居住者への過剰検査、(B)人権侵害の懸念、(C)国際的批判、(D)観光業への副作用、というリスクもある。トライロン副国家警察検査局長は「合法的に活動する外国人を保護しつつ、違法な活動のみを徹底排除する」姿勢を強調しており、運用の精度が試される。
タイ在住の日本人駐在員家族にとっては、(1)合法な就労ビザ・居住ビザの最新化を確認、(2)労働許可証(ワークパーミット)の有効期限と業務範囲の確認、(3)90日報告(タムマブットゥック)の遵守、(4)住居・契約書・税務記録の整備、(5)警察検問・職務質問への冷静な対応、(6)タイ人配偶者・友人の名義借りビジネス(ノミニー)への関与回避、などの実践的対策が重要となる。日本人は通常、合法的な手続きで滞在しているため警察の標的になることは少ないが、書類不備や手続き怠慢が発覚すると問題化するリスクがあるため、定期的な確認が推奨される。