サイアム商業銀行傘下の経済研究機関が、中東の軍事衝突が世界のエネルギー市場に波及し、タイの電気料金を大幅に押し上げる可能性があると警鐘を鳴らした。
同機関の分析によると、中東情勢の緊迫化を背景に液化天然ガスの国際価格が91%もの急騰を見せている。タイは発電燃料の多くをLNGに依存しており、調達コストの上昇が電力料金に直結する構造的な脆弱性を抱えている。このまま高止まりが続けば、2026年末には電気料金が1単位あたり4.9バーツを突破するリスクがあるという。
現在の電気料金は政府の補助金によって一定水準に抑えられているが、LNG価格がこの水準で推移し続ければ財政負担も膨らむ。家計への影響は避けられず、製造業や農業など電力を大量に消費する産業の競争力低下も懸念される。すでにディーゼル価格が50バーツを突破し物流コストが急騰しているなか、電気代の上昇が加われば家計と企業の二重の打撃となる。
同機関は政府と民間企業の双方に対し、早急な対応策の策定を求めている。再生可能エネルギーの導入加速やLNG調達先の多様化、省エネ設備への投資促進などが短中期の課題として挙げられる。アヌティン首相も施政方針演説でエネルギー危機への対応を最優先課題に掲げており、政策の実行力が問われる局面である。
ホルムズ海峡の封鎖リスクや産油国間の外交的緊張が続くなか、証券大手もGDP予測を1.3%に下方修正するなどタイ経済全体への逆風は強まる一方である。エネルギー安全保障の強化は、もはや将来の課題ではなく目前の緊急事態といえる。