アヌティン・チャーンウィラクン首相は9日、国会での施政方針演説に臨み、世界的なエネルギー危機への対応を最優先課題に掲げた。就任後初となる本格的な所信表明で、燃料コストの抑制策や資本市場の透明性向上、長期投資の拡充といった具体的な方針を示した格好である。
演説の柱となったのは「エネルギーコスト管理」「経済リセット」「国家改革」の3本柱である。とりわけエネルギー分野では、ホルムズ海峡の緊張に端を発する原油供給不安がタイ国内にも深刻な影響を及ぼしており、ジェット燃料の高騰でLCC3社が一部路線を運休するなど、国民生活に直結する問題として対処を迫られている状況だ。
経済面では「リセット」を掲げ、家計債務の解消支援と産業構造の転換を打ち出した。AI技術の活用推進にも言及しており、デジタル産業の育成を通じた新たな成長戦略を描く。証券大手が今年のGDP成長率予測を1.3%まで引き下げるなど景気の先行きに暗雲が広がるなか、具体的な成果を示せるかが問われることになる。
国家改革については、行政の効率化と公共サービスの質の向上を目指すとした。燃料高騰が地方経済を直撃し、救急ボランティアが出動停止に追い込まれる事態や、農家がトラクターを動かせず水牛に頼る光景が報じられるなか、政府の対応力そのものが試されている。
首相は「タイ国民が自立できる社会をつくる」と力を込めたが、国会では野党側からの厳しい追及も予想される。エネルギー価格の安定化、債務問題の解決、そしてAI産業の振興という多岐にわたる課題を同時に進めるには、省庁横断の実行力が不可欠となる。施政方針が絵に描いた餅に終わらないか、今後の具体策に注目が集まる。

