ソンクランで遊ぶお金が欲しかった、というのが動機だった。第2101タイレンジャー部隊が南部のリゾート施設に踏み込み、若者グループを一斉に検挙した。彼らが運んでいたのはケタミン(タイで「ヤーケ」と呼ばれる違法薬物)で、その量は200キロを超える。報酬は30万バーツ(約130万円相当)が提示されていたという。
行き先は「内陸部」とだけ供述されている。沿岸のリゾートで200キロ単位の荷物を受け取り、内陸へ届けるルートの中継地点で押さえられた格好だ。
引っかかったのは、報酬30万バーツの相場感である。タイの若者の月収を基準にすれば数十か月分、つまり「ちょっとした臨時収入」のレンジを大きく超える金額が、ぽんと提示されている。これだけ吊り上がっているということは、依頼側にも「捕まるリスクをそれなりに上乗せして払う」という前提があったのだろう。
ケタミンは医療現場では麻酔薬として使われる物質で、タイでは違法な娯楽薬物として流通する局面のほうが目立ってきた。200キロという量は、個人使用の桁では到底ない。誰かが「組織的に動かそうとしている」ことが、量の時点で明白である。
ソンクラン期は、毎年このタイミングで全国の取り締まりが強まる季節でもある。長期休暇に合わせて遊興費の需要が膨らみ、密売側がその空気を見越して人手を急募する。今回つかまった若者たちは、その需給の歪みのちょうど真ん中で、絡め取られた格好になった。
「割のいい仕事ないか」と聞いたら、その日のうちに30万バーツの話が回ってくる、というのは、それだけで十分に怖い話である。30万を手にする前に、200キロのケタミンを背負って逮捕される側に回ったというのが、若者たちのこのソンクランの結末となった。

