タイ西部カンチャナブリー県ムアン郡パークプレーク町(ตำบลปากแพรก)10村の森で2026年5月25日、50歳の僧侶ナンタポン(พระนันทพล)が森の中にハンモックを吊って横になり、配達ライダーに注文した6本のビールを片手に「孤独を紛らわすため」と飲酒していた事実が発覚した。森の現場には覚醒剤(ヤーバー / ยาบ้า / Methamphetamine)使用器具が散乱しており、行政官の捜査で同僧侶の尿検査が陽性(紫色 / สีม่วง)を示し、即座に強制還俗(สึก / unfrock)処分となった。発端は配達ライダーが現場で撮影した動画がSNSで拡散したことで、僧侶本人は「チップを良くあげたのに、動画を撮られて事件が広がった」と愚痴をこぼした。タイ社会の仏教戒律(ヴィナヤ)を真正面から踏みにじる衝撃事案として、SNSで急速に拡散している。
森のハンモック+ビール6本、配達ライダーの動画から発覚
事件発覚のきっかけは、配達ライダー(ไรเดอร์ / Rider / Grab・Foodpanda・LineMAN等の配送ドライバー)がSNSに投稿した動画。動画では、カンチャナブリー県の森の中にハンモックを吊って横になる僧侶らしき男性の姿が映り、地面には6本のビール瓶を入れた袋が置かれていた。ライダーが「ローンピー(หลวงพี่ / 僧侶への呼びかけ)、ビールを召し上がるんですか?」と問いかけると、男性は「もうすぐ還俗するから(問題ない)」と答え、撮影者を追い払おうとした。
「チップを良くあげたのに撮るとは…」、僧侶の愚痴
動画拡散後の行政官による事情聴取で、ナンタポン僧侶は「ライダーにビール6本+氷を配達してもらった。チップ(ทิป / tip)を良くあげたのに、動画を撮られて事件が広がってしまった」という意味の愚痴をこぼした。配達料金以外にチップを上乗せすれば、配達員が黙ってくれると思っていたが、結果的に動画がSNSで拡散して事件が表面化する事態となった。
行政官の現場検証、覚醒剤使用器具を発見
タイ社会のSNS上で動画が拡散した後、カンチャナブリームアン郡長ソンブーン・パーンソムブーン氏(นายสมบูรณ์ แผนสมบูรณ์)が即座に対応を指示。副郡長(治安担当)タナーユット・ピニチモントリー氏(ว่าที่ร้อยตรีธนายุทธ พินิจมนตรี)が、地元自治体・村長・副村長と共同で森の現場検証に向かった。現場はパークプレーク町10村の森林地帯、道路から徒歩で約200m入った地点。
現場では、焚き火の跡(ร่องรอยการก่อกองไฟ)に加えて、ヤーバー(覚醒剤)使用器具(อุปกรณ์เสพยาบ้า)が複数散乱していた。行政官は付近を捜索し、50歳のナンタポン僧侶本人を確保した。
尿検査で覚醒剤陽性、即還俗処分
ナンタポン僧侶の身柄を確保した後、行政官は即座に尿検査(ตรวจฉี่ / urine test)を実施した。検査結果はメタンフェタミン(ヤーバー)陽性を示す紫色(สีม่วง)反応。タイの仏教戒律と僧伽法では、薬物使用は最も重大な戒律違反の一つで、即座に強制還俗処分(สึก)の対象となる。ナンタポン僧侶は現場で還俗手続きを取られ、僧籍を剥奪された。
ナンタポン僧侶、プーケットで8年出家
身元確認の結果、ナンタポン氏(50歳)はカンチャナブリー県出身。プーケット県内のお寺で出家し、8年間にわたり修行・住職活動をしてきた経歴を持つ。今回はカンチャナブリーに帰省していたタイミングで、森でハンモック生活+ビール+覚醒剤という事件を起こした形になる。8年間の修行を経た成年僧侶が、戒律違反に至るまでの経緯は、警察と仏教委員会(สำนักงานพระพุทธศาสนาแห่งชาติ / National Office of Buddhism)が並行で追跡する事案となっている。
配達ライダーの便利さが裏目に、タイ社会のジレンマ
本事案を象徴的にする要素の一つが、配達ライダー文化の発達。Grab、Foodpanda、LineMAN、Robinhoodといった配達アプリの普及で、タイの隅々まで料理・酒類・タバコの配達が可能になった。森の中のハンモック生活でも、スマホ一つで6本のビールが届く時代となっている。一方、ライダー側もSNS文化の中で生きており、不自然な配達先には動画を撮影して投稿するケースも増えている。今回の事案は、配達文化の利便性と監視性が、僧侶の戒律違反を浮き彫りにした事例と言える。
タイ仏教界、相次ぐ僧侶スキャンダル
タイ仏教界では、近年、僧侶による戒律違反スキャンダルが断続的に発生してきた。麻薬使用、性的不品行、信徒からの寄付横領、ホテルでの女性同伴宿泊などの事案が、毎年複数件報道される。SNS時代になり、こうした事案が動画で記録・拡散しやすくなったことで、僧伽の信頼性が問われる場面が増えている。タイ国家仏教委員会は、僧侶への定期的な薬物検査・戒律教育の強化を継続的に進めているが、本事案のような個別事案を完全には防げない状況にある。
ヤーバー(覚醒剤)、タイの構造的問題
ヤーバー(ยาบ้า)はメタンフェタミン系覚醒剤の通称で、タイ語で「クレイジーピル」を意味する。ミャンマー側のシャン州・コーカン特別区から流入する麻薬の中で最も流通量が多い種類で、価格は1錠50-100バーツ(日本円で約230-460円)程度。社会の各層に深く浸透しており、僧侶のような尊重される立場の人物でも、使用に手を染めるケースが少なからず発生している。今回のナンタポン僧侶の事案も、こうした構造的問題の一端を示している。

