タイ・チョンブリー県バンランムン郡ノーンプルー町(パタヤ南部 / South Pattaya)の一軒のホテルで2026年5月25日早朝6時頃、中国人男性宿泊客がタイのトランスジェンダー女性(カトゥーイ / กะเทย / Kathoey)を、宴会で割れたグラスで顔・手・足を切りつけて重傷を負わせる事件が発生した。被害者は顔に19針、手に8針、足に4針、合計31針の縫合を受けた状態で、3階の部屋から血まみれで階段を駆け下りる姿が目撃されている。加害者の中国人男性は性労働の対価を払わないまま、その後現場から逃走。発覚は、被害者の友人ベル・アピサラ氏(Bell Apisara)がFacebookに事件動画を投稿し、SNSで急速に拡散したことから。ノーンプルー警察と現場ホテルが捜査中で、中国人観光客による暴力事件として、本日5/25に同時報道されたサケーオ警察恐喝事件と並んでタイ観光業界に深刻な打撃を与える内容となる。
5/25早朝6時、3階の部屋から血まみれで階段を駆け下りる
事件はパタヤ南部のホテル(ノーンプルー町)の3階の宿泊客室で2026年5月25日早朝6時頃に発生した。ホテルのフロント担当者の証言によると、午前6時頃、カトゥーイ(タイのトランスジェンダー女性)の被害者が「全身血まみれの状態で」3階の部屋から階段を駆け下りてきたという。当時のフロント担当者は前のシフトの同僚から事件の様子を聞いた状況で、被害者本人は救急車で病院に搬送された。
顔19針+手8針+足4針、合計31針の重傷
被害者の負傷の程度は、医療機関での縫合処置の針数で示される。顔に19針、手に8針、足に4針、合計31針の縫合を受ける重傷。中国人男性宿泊客が、宴会で割れた(割った)グラスを凶器として使い、被害者の顔・手・足を切りつけた攻撃と推定される。手と足の負傷は、被害者が顔への攻撃を防ごうとして両手両足で防御した際の防御創(defense wound)である可能性が高い。
部屋から出さず、執拗な暴行
事件の詳細を投稿したベル・アピサラ氏のFacebook投稿によると、加害者の中国人男性は「被害者を部屋から出さず、執拗に殴り、暴行を加えた」とのこと。1対1の暴行で、しかも逃げ場のない閉鎖的な部屋内での攻撃という構造から、計画的な暴力の要素が含まれる可能性が指摘される。具体的な動機については、被害者本人の証言、防犯カメラ映像、ホテルの宿泊記録から、警察が解明を進めている。
性労働の対価を未払いのまま逃走
被害者がカトゥーイ(タイのトランスジェンダー女性)であること、暴行が宿泊客室で発生したこと、加害者が「料金を払わずに逃走した」という供述から、本事案は性労働(sex work)を介した取引の中で発生した暴力事件であることが浮かび上がる。タイのパタヤ・パッポン・ナナといった観光地では、トランスジェンダー女性によるサービス産業が存在し、外国人観光客との間で取引が行われるケースがある。今回の事案では、対価の支払いを巡る争いが暴力に発展した可能性が高いとされる。
ベル・アピサラ氏のFacebook投稿でSNS拡散
事件が表面化したきっかけは、被害者の友人ベル・アピサラ氏(Bell Apisara)によるFacebook投稿。投稿には、事件直後の被害者の状態と、加害者の中国人男性の特徴が記載され、Facebookでシェア・コメントが急速に増加した。タイ国内SNSでは、本事案に対する強い怒りと、トランスジェンダー・コミュニティへの暴力に対する非難の声が広がっている。
ノーンプルー警察、中国人男性の身柄追跡中
ノーンプルー警察署(สภ.หนองปรือ)は事件発覚後、現場検証と捜査を開始した。ホテルの宿泊記録、防犯カメラ映像、被害者の証言から、加害者の中国人男性の身元特定を急いでいる。タイの刑法では、重傷を負わせる暴行罪(เจตนาทำร้ายร่างกายจนได้รับอันตรายสาหัส / aggravated assault causing grievous bodily harm)は最大10年の懲役対象。さらに、被害者の意思に反する監禁(false imprisonment)罪も併せて立件される可能性がある。中国人男性が既に出国している可能性もあり、警察は出入国管理局と連携してパスポート情報の追跡を進めている。
中国人観光客×タイ事件、サケーオ警察恐喝と並ぶ深刻案件
本事案は、本日5/25に並行して報道されたサケーオ県の警察恐喝事件(警察官6人+民間人1人が中国人国民5人を恐喝した容疑で起訴)と並んで、中国人観光客とタイの関係に深刻な影響を与える内容となる。(関連:サケーオで警察が中国人5人を恐喝、警官6人起訴、中国大使館が渡航警告で観光-30%懸念)。一方は中国人国民が被害者(警察の恐喝)、他方は中国人国民が加害者(カトゥーイへの暴行)という対照的な構図で、両国関係の複雑さを浮き彫りにする。
トランスジェンダー・コミュニティへの暴力、長年の課題
タイのトランスジェンダー・コミュニティ(LGBTQ+)は、観光業・エンタメ業界・サービス産業で広く活躍している一方で、暴力被害・差別・偏見の対象になることも少なくない。タイは2024年に同性婚を法制化(2025年1月発効)し、LGBTQ+の権利保護で東南アジアのリーダー的立場を取っているが、トランスジェンダー女性に対する性暴力・身体的暴力は依然として深刻な課題。今回の事案は、暴力被害者の人権保護とトランスジェンダー・コミュニティの安全確保の必要性を改めて訴える事案となっている。