タイ南部パッターン県(จ.พัทลุง / Phatthalung)ムアン郡パッターン市ポドゥンドンヨー通り(ถ.ผดุงดอนยอ)のマーラー(หม่าล่า / 中華風羊・牛・羊鍋スタイル)レストランで2026年5月25日午前0時40分、地元ジャーナリストのニティコーン氏(นายนิติกร)と住民が食事中のテーブルに、青少年グループがオートバイで現れて拳銃と散弾銃を発砲する事件が起きた。幸い怪我人はなかったが、店内の客は強い恐怖を感じ、「中心市街地で安全がない」と訴えた。パッターン・ムアン警察署のソムプラート・カンナーノン警察大佐(พ.ต.อ.สมปราช์ กรรณกานนท์)が現場検証を指揮し、防犯カメラ映像から犯人グループを特定。リーダーは元警察官の息子ナモー(นายนโม)とされ、警察は「ジャーナリストによる青少年犯罪の継続報道に対する報復」が動機と推定している。グループには16歳の殺人未遂歴のある青少年も含まれており、タイ国内の報道の自由・地方治安の問題として深刻な事案となっている。
5/25午前0時40分、マーラー店でジャーナリストのテーブルに発砲
事件はパッターン市内中心部、ポドゥンドンヨー通りに面する「マーラー(หม่าล่า)」レストランで発生した。マーラーは中国・四川料理を基盤とした火鍋スタイルで、タイ南部でも人気のレストランジャンル。深夜にも営業する店舗が多く、地元住民と取材ジャーナリストの夜食の場となっていた。
5月25日午前0時40分、青少年グループ複数人がオートバイ(รถจักรยานยนต์)で店前に現れ、地元ジャーナリスト・ニティコーン氏(นายนิติกร、パッターン県専属の地元記者)と住民が食事中のテーブルに向けて拳銃と散弾銃で発砲した。店内には食事中の客が複数おり、銃声に強い恐怖を感じて避難する状況となった。幸い負傷者はなかったが、現場には弾頭、リボルバー(拳銃)とショットガン(散弾銃)の弾殻が散乱した。
「中心市街地で安全がない」、住民が警察に厳格取締要請
事件後、店内にいた客と近隣住民は強い不安を表明した。「パッターン市の中心市街地で深夜にこんな発砲事件が起きるとは、安全がまったく感じられない」「警察は青少年の銃器使用を本気で取り締まってほしい」といった声が広がっている。タイ南部の地方都市では、青少年グループによる暴力事件・銃器使用が長年問題視されてきたが、市中心部の飲食店で公然と射撃される事案は珍しい。
防犯カメラで犯人特定、元警察官の息子「ナモー」主導
事件発覚後、パッターン・ムアン警察署のソムプラート・カンナーノン警察大佐が、警察証拠課(กองพิสูจน์หลักฐาน)と捜査班を率いて現場に出動した。物的証拠(弾頭、弾殻、銃器の破片)を収集すると同時に、近隣の防犯カメラ映像を確認。映像から犯人グループの身元が特定された。
リーダー格は地元で「ナモー(นายนโม)」と呼ばれる青年で、元警察官の息子。元警察官の子息ということで、現役警察官との関係性、武器入手ルート、捜査への影響なども焦点となる可能性がある。グループのメンバーには、16歳の青少年が含まれており、過去に殺人未遂(พยายามฆ่า / attempted murder)の前科があるとされる。
動機は「報道への報復」、ニティコーン記者は青少年犯罪を継続報道
警察が現時点で推定する動機は「報道への報復(retaliation against journalism)」。標的となったニティコーン氏は、パッターン県専属の地元ジャーナリストとして、最近継続的に「同地区の青少年グループによる犯罪事件」を報道してきた。報道された側の青少年グループが「自分たちの活動が報道されている」ことに不満を抱き、ジャーナリスト個人を狙った報復攻撃を実行した可能性が高いとされる。
ただし警察は「他の人物が背後にいる可能性も完全に排除していない」と述べており、組織的な犯罪ネットワークやより上位の人物が背後にいる可能性も含めて捜査を進めている。
タイの報道の自由、地方ジャーナリストへの暴力が継続
タイの報道の自由(Press Freedom)指数は、世界ランキングで中位に位置する。中央の大手メディアと違い、地方の専属記者は警察・地方政治家・暴力団・青少年グループといった地元勢力との接触リスクが高く、過去にも何度かジャーナリストへの暴力・脅迫・殺害事件が発生してきた。今回の事案は、地方ジャーナリストが取材現場に深く入り込むほど、自身の安全リスクも高まる構造を改めて示すケースとなる。
国際記者連盟(IFJ)、国境なき記者団(RSF)、タイのジャーナリスト連盟・MASS(タイ・マスコミュニケーション組合)などが、本事案への正式声明を発出する可能性が高い。
16歳の青少年に過去の殺人未遂歴、再犯抑止策の課題
犯人グループに含まれる16歳の青少年が過去に殺人未遂の前科を持っていたという事実は、タイの青少年犯罪と再犯抑止策の課題を浮き彫りにする。タイの少年法では、18歳未満の青少年への刑事処分は教育・更生措置が中心で、過去に重大犯罪の前科があっても再び社会に戻されるケースがある。再犯リスクの高い青少年への監視・更生プログラムの強化が、今回の事案を契機に再検討される可能性がある。
パッターン市の地理、ソンクラー隣の南部県
パッターン県は、タイ南部マレーシア国境地域の北側、ソンクラー県の北に位置する人口約50万人の中規模県。県都パッターン市の人口は約4万人で、コンパクトな中心市街地を持つ。タイ南部の他の県(ヤラー、ナラーティワート)と地理的に近いものの、南部国境問題(マレー系イスラム教徒の分離独立運動)の影響は比較的小さく、相対的に治安は良いとされてきた。今回の事案は、こうしたパッターン県の治安イメージにも影響を与える内容となる。



