タイ中央銀行(BOT)のセータープット総裁は9日、中東情勢の悪化がタイ経済に与える影響について記者会見を開き、2026年のGDP成長率見通しを従来予測から大幅に引き下げ、1.3〜1.7%になるとの見解を示した。
総裁が成長鈍化の要因として挙げたのは「紛争の長期化リスク」「エスカレーションの度合い」「エネルギー供給網の混乱」の3点である。とりわけホルムズ海峡の通航制限が長引けば、原油調達コストの上昇を通じて製造業や物流に深刻な打撃を与えると警告した。世界銀行も同日、タイのGDP予測を1.3%に下方修正しており、国際機関と中銀の見通しが足並みをそろえた格好である。
景気の減速が家計に与える影響を緩和するため、BOTは金融機関に対し債務者支援策の拡充を指示する方針も明らかにした。具体的には、利息のみの返済への切り替えや月々の返済額の引き下げといった措置を想定しており、先日発表された銀行への救済命令をさらに強化する内容となる。
足元ではディーゼル価格が1リットル50バーツを突破し、漁業や陸運をはじめとする実体経済への影響が顕在化している。LNG価格も91%急騰しており、年末には電気料金が1ユニットあたり4.9バーツを超えるとの試算も出ている。エネルギーコストの高騰が消費と投資の両面から成長を圧迫する構図が鮮明になりつつある。
総裁は今後の金融政策について明言を避けたものの、市場では利下げ観測が一段と強まっている。民間証券大手もGDP予測を1.3%に下方修正し、年内0.75%の利下げを予想しており、中銀が次回の金融政策委員会で追加緩和に踏み切るかが最大の焦点となる。