スリン県の市場に活気がない。かつて大勢の買い物客で賑わった露天市場が、今は閑散としている。ディーゼル価格がリットル50バーツを超え、商売人も客も身動きが取れなくなった。
県内のクロントム市場を取材すると、果物売りのソムチャイさん(50)が窮状を訴えた。仕入れの運搬コストが跳ね上がり、値上げすれば客が離れる。かといって据え置けば赤字が膨らむ一方。「このまま続くなら店をたたんで別の仕事を探すしかない」と話す。
同じ市場の他の商売人も口を揃える。常連客が激減した。みな財布の紐を締めており、以前の半分も買ってくれない。ディーゼル高騰はガソリン代だけの問題ではなく、あらゆる商品の仕入れ値を押し上げている。
ウドンターニーのいかだ下り観光が7割減、ラヨーンの漁船500隻が港に釘付けと、燃料危機の影響は業種を問わず全国に広がっている。バンコクの政策議論とは別の次元で、地方の生活はすでに限界に近づいている。
住民たちは「政府が何か手を打ってくれるのを待つしかない」と話すが、その表情に期待の色は薄い。東北部の小さな市場から見えるのは、燃料危機がタイの末端経済を確実に蝕んでいる姿である。