タイ・カンボジア国境に位置するサケオ県バンノンチャンで6月23日、住民の土地権利を確定するための測量が完了した。対象の3区画すべてで作業が終わり、カンボジア側からの妨害も異議もなかったという。40年以上も宙に浮いていた土地問題が、ようやく権利証の発行へ動き出す。両国の国境緊張が収まらないなかでの前進であり、タイが行政手続きを通じて実効支配を固める動きとも受け取れる。
バンノンチャンで行われた測量
サケオ県コクスン郡ノンマークムン地区のバンノンチャンで6月23日、アランヤプラテート任務部隊の歩兵第2中隊が現地に入った。内務省地方行政局と土地局の職員とともに、住民の土地権利を確認する測量を実施したものだ。対象となったのは3世帯で、面積はそれぞれ30ライ、11ライ余、40ライだった。タイの面積単位である1ライは1,600平方メートル(約0.16ヘクタール)にあたり、40ライはおよそ6.4ヘクタールに相当する。
軍の説明によると、測量は予定どおり全区画で完了し、当事者のいずれからも異議や妨害は出なかった。次の段階として、占有と利用の権利を法的に裏づける権利証(チャノート)の発行手続きへ進む。地元では40年以上にわたってこの土地の権利が確定せず、農業を営む住民にとっては生活の基盤を左右する問題が続いてきた。
なぜ40年も解決しなかったのか
バンノンチャン一帯は、1980年代にカンボジア難民キャンプが置かれた歴史を持つ国境の村だ。境界標46番と47番のあいだに位置し、土地の帰属をめぐってタイとカンボジア双方の主張が長くぶつかってきた。多くのタイ人世帯は正式な権利証を持たないまま耕作を続け、その間にカンボジア側の入植が広がったとされる。
タイ政府はこの地域を明確に自国領としており、サケオ県知事はカンボジア国民によって侵食されたとする土地の「奪還」を進める姿勢を示してきた。地元報道によれば、権利証の交付には旧来の占有届(ソーコー1)の保有者が継続的な利用を証明する必要があり、対象区画は航空測量を経て交付される。森林保護区や山地、共同利用地は対象から外れる。一方でカンボジア側は、タイが主張する「侵食」そのものを認めていない。
収まらない国境の緊張
今回の測量が注目されるのは、タイとカンボジアの国境情勢が依然として不安定だからだ。両国は817キロに及ぶ国境線の画定をめぐって対立し、2025年7月と12月には大規模な軍事衝突にまで発展した。報道では、同年12月以降は停戦が保たれているものの、小規模な事件や相互不信がくすぶり続けているとされる。
2026年6月に入っても緊張は途切れていない。チョンボック付近の爆発物をめぐってタイが抗議し、カンボジアがこれを否定するなど神経戦が報じられた。サケオ県のアランヤプラテート国境検問所が再開されるとの観測をタイ政府が打ち消すなど、人の往来も制限が続く。鉄道東線はアランヤプラテートまで運行せず、サケオやカビンブリで折り返す措置がとられている。在タイ米国大使館も、国境地帯での武力衝突について注意を呼びかけている。
こうした状況のなかで、係争地の住民に権利証を交付する動きは、タイが日常の行政を積み重ねて実効支配を示す一手とも映る。バンノンチャンの土地問題が40年を経て前進する一方、国境全体の画定という根本の対立には、なお解決の糸口が見えていない。

