バンコクの警察経済犯罪抑止課(ECSD)が6月13日、タイ人を名義株主に仕立てて外国人規制をすり抜けていた中国系の不動産投資ネットワークを摘発した。市内5カ所を一斉に捜索し、首謀者とされる35歳の中国人ハオ容疑者を高級住宅地の自宅で拘束。ネットワークが握る資産は数億バーツ規模とされる。タイでは外国人による土地・事業所有が法律で厳しく制限されており、それを回避する「ノミニー(名義貸し)」が長年の問題になっている。
タイ人女性を名義株主に、実権は中国側
捜索を受けたのは、ナラウィー・ホールディング、ホールディング・グッド(タイランド)、リアン・ピープル・タイ・トレーディングの3社に加え、法律事務所のTAローファーム、そしてハオ容疑者の自宅を合わせた5拠点である。会社の登記上はタイ人女性が取締役や筆頭株主に名を連ねていたが、実際の経営と資産は中国人投資家が裏で握っていたとされる。
そもそもタイでは、外国人が土地を所有することは原則できず、コンドミニアムも建物全体の49%までしか外国人名義にできない。不動産で大きく稼ごうとすればタイ人や現地法人の名義に頼らざるを得ない構造があり、これが名義貸しの温床になっている。今回はその典型例で、外資の実態を隠すために法律事務所までが仕組みの一部に組み込まれていた疑いがある。
現金・8種類の外貨・暗号資産機材を押収
捜索で警察は、140万バーツ(約680万円)超の現金のほか、8種類にのぼる外貨、複数の暗号資産取引用とみられる機材、土地の権利証や売買契約書、さらに赤ナンバーの高級ミニバン「トヨタ・アルファード」を押収した。タイで赤ナンバーは登録前の車両に付く仮ナンバーで、高額車両が手元にあったことをうかがわせる。
タイの外国人事業法では、名義貸しに関与したタイ人・外国人の双方に最高で禁錮3年、10万〜100万バーツの罰金が科され得る。違反が確認されれば事業の停止や資産の没収にもつながる重い違反であり、関係者は全員が容疑を否認している。当局は資金の流れと不動産の実態解明を進めるとしている。
相次ぐ中国系「グレービジネス」への摘発
タイでは近年、不動産や観光、物流などの分野で、中国資本がタイ人名義を使って実質支配する「グレービジネス」への取り締まりが強化されている。コロナ後に中国からの投資と移住が急増し、名義貸しや地下銀行、ゼロダラーツアーといった手口が繰り返し問題視されてきた。
今回の摘発は、その流れの中で当局が外国人による不透明な資産形成にメスを入れた一例といえる。タイで合法的に会社を設立して事業を営む外国人にとっても、ノミニー規制の運用がどこまで厳格化するかは無関心ではいられないテーマだ。