タイ民間航空局(CAAT)が、航空機内へのモバイルバッテリー(充電式の予備バッテリー)の持ち込みルールを厳格化した。新ルールでは、機内に持ち込めるのは手荷物に入れた2個までとし、飛行中の充電や使用、頭上の収納棚への保管を禁止する。国際民間航空機関(ICAO)が定めた新たな国際基準に合わせた措置で、リチウムイオン電池の発火リスクを抑えるのが狙いだ。タイを発着する旅行者は、出発前に手持ちのバッテリーを確認しておく必要がある。
何が変わるのか
新ルールの柱は大きく分けて3つある。まず、モバイルバッテリーは預け入れ荷物には入れられず、客室に持ち込む手荷物に限られる。次に、機内に持ち込める数は1人あたり2個までに制限される。そして飛行中は、座席のUSBポートや電源を使った充電を含め、バッテリーの充電や使用が一切禁止される。加えて、頭上の収納棚ではなく、座席の下や前のポケットなど手の届く場所で管理することが求められる。
これらはいずれも、万一バッテリーが過熱・発火した際に、乗務員や乗客がすぐに気づいて対応できるようにするための措置である。実際、タイ国際航空やエアアジアは2026年3月下旬から、機内でのモバイルバッテリーの使用禁止を順次導入してきた。今回のCAATの規則は、航空会社ごとにばらつきのあった対応を、当局のルールとして足並みをそろえる形になる。
なぜリチウム電池が問題なのか
モバイルバッテリーに使われるリチウムイオン電池は、内部で異常が起きると急激に発熱し、「熱暴走」と呼ばれる連鎖反応で発火することがある。気圧の変化や強い衝撃、過充電などが引き金になりやすく、密閉された機内では小さな出火でも重大な事態につながりかねない。
航空業界では近年、機内でのバッテリーの発煙・発火トラブルが各国で報告されてきた。預け入れ荷物の中で発火すると発見が遅れ、貨物室では消火も難しい。このため世界の航空当局は、バッテリーを必ず客室に持ち込ませ、乗務員の目の届く場所で管理させる方向で対応を進めている。今回のタイの措置も、ICAOの新基準に沿ったこうした国際的な流れの一環だ。
旅行者が確認しておきたいこと
一般的なルールとして、容量100ワット時(おおむね20,000mAh)以下のモバイルバッテリーは多くの航空会社で持ち込みが認められている。100〜160ワット時のものは航空会社の許可が必要で、160ワット時(おおむね32,000mAh)を超える大容量品は持ち込み自体が禁止されることが多い。容量はバッテリー本体に「Wh」または「mAh」で表示されているので、出発前に確かめておきたい。
スマートフォンやタブレットを長時間使う旅行者にとって、モバイルバッテリーは欠かせない存在だ。だが今後は、機内で気軽に充電するという使い方ができなくなる。搭乗前に端末とバッテリーの充電を済ませ、容量と個数を確かめ、すぐ取り出せる場所に入れておくことが、トラブルを避けるうえで欠かせない準備になる。ルールは航空会社によって細部が異なる場合があり、利用する便の最新の案内も確認しておくと安心だ。