タイで生態系を脅かす外来魚「ブラックチンティラピア」の駆除をめぐり、サムットサーコン県の魚粉工場が、この魚を1キロ10バーツで無制限に買い取る取り組みを続けている。漁業局が手続きを簡素化し、身分証を見せるだけで売れるようにしたところ、5県の養殖業者や漁師が次々と持ち込み、買い取り量はすでに3万3,000キロを超えた。やっかいな外来魚を「お金になる魚」に変えることで、駆除を一気に進めようという試みだ。
3万3,000キロを買い取り
魚粉工場は、漁業局が手続きを見直したことを受け、ブラックチンティラピアの買い取りを連日続けている。これまでは販売に証明書類が必要だったが、今は国民身分証を提示するだけでよく、量の上限もない。価格は1キロあたり10バーツに設定されている。
この仕組みのもと、5つの県の農家や漁師が捕まえた魚を持ち込み、買い取り量は3万3,000キロを突破した。捕れば捕るほど現金になるため、駆除に向けた動機づけが働く形だ。買い取られた魚は魚粉などに加工され、無駄なく活用される。
なぜブラックチンティラピアが問題なのか
ブラックチンティラピアは、もともとタイにいなかった外来魚で、近年、中部の沿岸部を中心に爆発的に数を増やした。汽水域でも淡水域でも生きられる強い生命力を持ち、繁殖力も旺盛だ。在来の魚やエビ、稚魚を食い荒らし、養殖池に入り込んで大きな被害をもたらしてきた。
この魚の急増は、各地の漁業者やエビ養殖農家にとって深刻な打撃となっている。被害は中部の複数の県に広がり、国を挙げての対応が迫られる事態となった。一度広がると根絶は難しく、放置すれば生態系のバランスが崩れ、地域の水産業そのものが揺らぎかねない。タイ政府はこの数年、買い取りに加え、天敵となる肉食魚を放流したり、捕った魚を魚粉や肥料などの製品に変えて活用したりと、複数の手段を組み合わせて駆除を進めてきた。
「駆除」と「収入」を両立させる
今回の買い取りの狙いは、駆除と漁業者の収入を同時に成り立たせる点にある。捕った魚がそのまま現金になれば、住民は進んで捕獲に協力する。たくさん捕れば捕るほど外来魚は減り、漁業者の手元にはお金が入る。
ただし、外来魚の問題は買い取りだけで解決するわけではない。繁殖の速さに駆除が追いつかなければ、いたちごっこになりかねない。買い取り価格をどう維持するか、捕獲が一時的な収入で終わらないようにできるかも課題となる。地道な捕獲を続けながら、増殖そのものを抑える対策も合わせて求められる。やっかいな魚をどう減らしていくか、タイの取り組みが続いている。