タイ中部の保養地フアヒンで、ベッドから動けないスイス人男性の自宅から、長年集めたレコードやCDのコレクションがそっくり盗まれた。被害額は約30万スイスフラン(約1,250万円)。男性は、含まれていた希少な盤の多くが二度と手に入らないとして、コレクターらに情報提供を呼びかけている。
被害に遭ったのは、フアヒンのヒンレックファイ地区に住むスイス人男性ピーター・カルトさん。寝たきりの状態で暮らしており、自宅の保管室には、1,000枚を超えるレコードと400枚のCDが収められていた。妻のブリギットさんがマッサージから戻った際に、コレクションが消えていることに気づいたという。盗まれたのは5月5日ごろとみられている。
カルトさんが疑っているのは、地元の介護サービス会社を通じて雇っていた元介護者の女だ。この女は以前から金銭的に苦しく、カルトさん夫妻に何度かお金を無心していたという。警察には5月5日に被害届が出された。防犯カメラには、女がバイクに乗り、不審なビニール袋を抱えて敷地を出ていく様子が記録されていたとされる。警察は映像から人物を特定したものの、捜査の進展は明らかにされていない。
カルトさんによれば、盗まれたコレクションには希少な限定盤などが多く含まれ、金額だけでは測れない価値があるという。アナログレコードは近年、世界的に再評価が進み、希少な初版や廃盤は高値で取引される。1枚あたりは小さくとも、長い時間をかけて集めた1,000枚を超えるコレクションともなれば、全体の価値は膨大になる。カルトさんは報道機関に連絡を取り、希少な音楽コレクションを売ろうとする不審な人物を見かけたら通報してほしいと訴えている。盗品が中古市場やネットに流れる前に、足取りをつかめるかが焦点となる。
フアヒンは、バンコクから車で数時間の海辺の街で、欧米からの長期滞在者や、引退後に移り住む外国人も多い。今回のように、身体の不自由な高齢者が、身近で世話をする人物に裏切られる形の被害は、金銭面だけでなく精神的な打撃も大きい。介護を他人に頼らざるを得ない人ほど、相手の身元や評判をどう確かめるか、貴重品をどう守るかという難しさを突きつけられる。タイで暮らす高齢の外国人にとっても、人ごとではない出来事だ。