タイ南部の観光地クラビで、外国人がタイ人の名義を借りて実質的に事業を支配する「名義貸し(ノミニー)」の疑いがあるとして、当局が高級プールヴィラを家宅捜索した。このヴィラは、スペイン国籍の人物が関わり、許可なく観光客向けに貸し出されていたとみられる。タイでは今、外国人によるこうした不透明な事業への取り締まりが強まっている。
知事が令状を持って高級ヴィラを捜索
捜索が行われたのは、クラビ県ムアンクラビ郡ノンターレ地区にある、1ライ(約1,600平方メートル)を超える敷地の高級プールヴィラである。6月2日、クラビのアンクーン知事が、県の裁判所が出した令状を持って捜索に入った。
このヴィラは、タイ人1人とスペイン国籍の2人による共同出資の形で登記されていた。しかし、捜査の結果、実際にはスペイン側が事業を支配していた疑いが浮かんだ。さらに、ホテルの営業許可を取らないまま外国人観光客に日ごとに貸し出していたとみられ、ホテル業法などに違反する可能性がある。当局は、宿泊した外国人を入管当局に報告していたかも調べている。
外国人の「名義貸し」とは何か
タイの法律では、会社の株式の過半を外国人が持つことや、外国人が土地を直接所有することが、原則として認められていない。そこで、タイ人に名義だけを貸してもらい、実際は外国人が経営や所有を握るという抜け道が、長年問題になってきた。これが「名義貸し(ノミニー)」である。
形のうえではタイ人が出資者でも、実態として外国人が支配していれば、外国人事業法などに触れるおそれがある。リゾート開発や不動産投資をしたい外国人が、タイ人に名義を借りる誘惑にかられやすいが、それが発覚すれば事業の取り消しや罰則の対象となり、投資そのものを失いかねない。とりわけ観光地のヴィラやホテル、飲食店で、こうした手法が使われる例が後を絶たず、表向きの登記と実態の食い違いが摘発を難しくしている。
観光地で進む一斉摘発
今回の捜索は、単発のものではない。タイの事業開発局は、クラビに対し、名義貸しの疑いがある事業者401件のリストを送ったとされる。これまでに8件が捜索され、1件が処罰を受け、6件では外国人が土地を保有していたという。
別の人気観光地パンガン島では、300人を超える警察官が動員され、外国人の名義貸しが疑われる32の会社が一斉に捜索された。観光客が集まる島やリゾート地ほど、外国人による不動産や事業の取得をめぐる問題が起きやすい。タイ政府は、自国の土地や産業を守る観点から、こうした摘発を強める構えだ。