バンコクで、配車アプリ「Bolt」の運転手が日本人の乗客に暴行したとして、タイ政府がBolt側に説明を求める事態になっている。被害を訴えているのは日本人男性で、5月28日、繁華街アソークで乗車中、運転手から料金が安すぎるとして途中で降りるよう迫られ、口論の末に殴られたとSNSで明らかにした。投稿が日本語にも翻訳されて広まり、当局が動いた。
料金を巡るトラブルから暴行に
男性の訴えによると、トラブルは運賃をめぐって始まった。運転手は、走った距離に対して料金が安すぎると主張し、走行の途中で男性に車を降りるよう求めたという。男性が「料金に不満があるならBoltに言うべきだ」と返したところ、運転手は腹を立てて車を止め、降りてきて男性の後頭部を殴ったとしている。近くにいたバイクタクシーの運転手たちが間に入って暴行を止めた。男性のサンダルは壊れ、近くのマッサージ店の従業員が代わりを渡したという。男性は頭部のけがの写真をSNSに投稿しており、フェイスブックのページが日本語に訳して広めたことで、一気に注目が集まった。
政府がBoltを6月5日に聴取へ
事態を受けて、首相府のスパマス大臣は、6月5日にBoltを呼び、運転手の審査体制や処分、被害者への対応について説明を求めると明らかにした。男性は警察にも届け出たが、警察官が到着したときには運転手はすでに立ち去っていたという。Bolt側の見解は、今のところ明らかになっていない。なお、ここまでに伝わっているのは主に男性側の説明であり、運転手側の言い分や事実関係は、今後の調査で確かめられることになる。
配車アプリと利用者の安全
タイでは2021年に配車アプリが正式に認められ、いまではGrabが大きなシェアを握り、ボルトなどが追う構図になっている。観光客や在住外国人も日常の足として頻繁に利用する。料金はアプリが事前に提示する仕組みだが、それでも「距離のわりに安すぎる」として運転手が難色を示したり、現金での上乗せを求めたりするトラブルは後を絶たない。便利な一方で、運賃や経路を巡る運転手とのトラブルは時折起きており、今回のように暴力に発展した訴えは、利用者に不安を与える。とりわけ外国人は、言葉の壁から運転手と直接やり合うのが難しく、不利な立場に置かれやすい。アプリ会社には、運転手の登録審査やトラブル時の対応の透明性が一層求められる。
利用する側も、料金や経路で食い違いがあればその場で激しく言い争わず、アプリの記録を残したうえで運営に報告するのが安全だ。乗車前に目的地と概算料金を確認し、降車を求められても安全な場所まで動かないなど、身を守る工夫も役に立つ。便利なサービスだからこそ、利用者と運転手の双方が安心できる仕組みづくりが問われている。日本人をはじめ外国人にとっては、トラブルの相手や経緯を言葉で説明しづらいだけに、アプリ上の記録や領収、位置情報が、いざというときの裏づけになる。けがを負うようなトラブルに巻き込まれた場合は、警察への通報に加え、在タイ日本国大使館の領事窓口に相談する方法もある。今回の件が、配車サービスの安全対策を見直す契機になるかどうかも注目される。