観光地サムイ島でタクシー運転手が射殺された事件で、主犯格とされる男が5月31日、対岸のスラタニ市で逮捕された。逮捕されたのはパカシット容疑者(28、通称バンク)で、計画的殺人などの容疑がかけられている。この事件では令状の出た12人のうち10人がすでに拘束され、逃走を手助けしたとされる2人が今も追われている。
逮捕までの逃走劇
パカシット容疑者は5月31日午後5時45分ごろ、スラタニ市内の知人宅で身柄を確保された。抵抗はなかったという。警察によると、容疑者は事件の直後にサムイ島を離れ、未明のうちに漁船などを使って本土側のスラタニへ渡り、市内に潜伏していた。捜査を主導した第8管区捜査課のピッサヌ・プアンプロム警察大佐は、サムイ郡裁判所が出した令状に基づく逮捕だと説明している。容疑は計画的殺人と銃刀法違反である。
事件の経緯と本人の主張
被害者は、5月24日にサムイ島で射殺されたタクシー運転手のシカリン氏である。逮捕されたパカシット容疑者は、アプリ配車のバイクタクシー運転手として働いており、当日はタクシー運転手の仲間に会うために現場へ立ち寄ったとされる。容疑者は調べに対し、口論から取っ組み合いに発展し、相手に右脇腹を刺されたため反撃したと主張している。ただしこの説明は確認されておらず、警察は計画的な犯行の疑いで捜査を進めている。
残る2人と逃走を支えた人物
令状が出ているのは計12人で、このうち10人が拘束された。逃走中の2人のうち1人は、容疑者の手当てや漁船での逃走を手配し、銃の入手にも関わったとされる「黄色ナンバー」タクシー乗り場の管理役だという。もう1人は、グループが使った貸家の所有者とされる。組織的に逃走を支えた構図が浮かび、警察は南部の「有力者ネットワーク」の関与も視野に調べている。
くすぶる「タクシーマフィア」問題
警察は今回の事件について、組織的な縄張り抗争ではなく、タクシー運転手どうしのトラブルが背景だとの見方を示している。一方でこの事件は、サムイ島の交通業界に根強いとされる「タクシーマフィア」の影響をめぐる議論を再び呼び起こした。サムイ島では空港や港でのタクシー料金や乗り場の主導権をめぐる対立が以前から指摘されてきた。今回の摘発は、運転手射殺を受けて当局が進めてきた業界の一斉取締りの一環でもある。料金をめぐるトラブルや強引な客引きは観光客からの苦情が絶えず、島の評判にも関わるだけに、警察は残る逃走者の行方を追っている。