バンコクのスワンナプーム空港にある1本のエスカレーターが、SNSで「世界一悲しいエスカレーター」と呼ばれ話題になっている。国際線のチェックインカウンターから出国審査の方へと客を運ぶ、ごく普通の動く階段だ。それでも多くの旅行者にとって、これに乗ることは「タイを去る瞬間」を意味する。
「Depresscalator」=憂鬱なエスカレーター
このエスカレーターには「Depresscalator(ディプレスカレーター)」というあだ名が付いた。「depress(憂鬱にさせる)」と「escalator(エスカレーター)」を掛け合わせた造語だ。チェックインを終え、出国審査へ向かうこの上り階段に足を乗せた瞬間、楽しかったタイ旅行が終わってしまう。その切なさが、世界中の旅行者の共感を呼んでいる。
TikTokやインスタで「タイ・ブルー」
TikTokやインスタグラムには、ゆっくりと上っていくエスカレーターを撮影した動画が数百本も投稿されている。「Thailand effect(タイ効果)」「Thailand blues(タイ・ブルー)」といったタグとともに、ビーチや離島、屋台料理、のんびりした時間との別れを惜しむ声があふれる。スーツケースとお土産、そして日焼けを抱えた旅行者が、「まだ帰りたくない」という思いも一緒に運んでいる。
「過ごしやすい国」の裏返し
このやや大げさなネーミングは、裏を返せばタイがそれだけ居心地のよい国だということでもある。手ごろな物価、温かい人々、豊かな食、ゆるやかに流れる時間。近年はリモートワーカーやデジタルノマドからの人気も高まり、「もっと長くいたい」と感じる人が増えている。あの悲しいエスカレーターは、また戻ってくる理由の裏返しでもある。
帰国後に訪れる「タイロス」
旅行から戻ったあとも、しばらくタイが恋しくて気分が晴れない、いわゆる「タイロス」を感じる人は少なくない。あの悲しいエスカレーターは、その入り口のような存在だ。逆に言えば、それだけ濃い時間を過ごせたということでもある。多くの旅行者にとって、あの一段は「また来よう」と思い直す場所にもなっている。




