タイ国立公園野生動物植物保護局(กรมอุทยานฯ)長官アタポン・チャルーンチャンサ氏(นายอรรถพล เจริญชันษา)が2026年5月26日、近時にナコンナヨーク・チャンタブリ・カンチャナブリの3県で野生象の死骸が相次いで発見されたことを受け、特別作戦部隊「ファヤースー(พญาเสือ / 虎将)」と野生動物保護局に現場調査を指示した。今日のケースはカオヤイ国立公園(เขาใหญ่)内、ナコンナヨーク県ムアン郡サーリカー区カオケーオ村でパトロール隊「コーヤー13」が発見した野生象の骨だけの死骸で、頭蓋骨から象牙が消失していた。死亡推定時期は1-3ヶ月前。タイの野生象の密猟・象牙取引は厳しく規制されているが、3県同時発見は組織的な密猟ネットワークの存在を示唆する可能性があり、捜査当局は警察と連携して証拠収集を進めている。
5/26、カオヤイで野生象の骨化死骸+象牙消失
カオヤイ国立公園内の現場調査の概要は以下の通り。
- 発見日: 2026年5月26日
- 発見場所: ナコンナヨーク県ムアン郡サーリカー区カオケーオ村1
- 発見者: 巡視部隊「コーヤー13(ขญ 13)」(カオヤイ国立公園のパトロール部隊)
- 死亡推定時期: 1-3ヶ月前(骨化が進んだ状態)
- 状態: 全身が骨だけに、頭蓋骨から象牙のみ消失
- 連絡先: ナコンナヨーク警察(สภ.เมืองนครนายก)と協力、証拠収集中
カオヤイ国立公園長チャイヤー・フアイホンチョン氏(นายชัยยา ห้วยหงษ์ทอง)、野生動物保護局長スキー・ブンサーン氏(นายสุขี บุญสร้าง)が現地調査の指揮を執っている。
3県同時発見、組織的密猟ネットワークの疑い
注目すべき点は、短期間で3県(ナコンナヨーク、チャンタブリ、カンチャナブリ)から野生象の死骸が発見されたこと。3県の位置関係は以下の通り。
- ナコンナヨーク: バンコク北東約100km、カオヤイ国立公園エリア
- チャンタブリ: バンコク南東約240km、カンボジア国境近く
- カンチャナブリ: バンコク西約130km、ミャンマー国境近く
これら3県は、いずれも国境地帯や保護林に近く、野生象の生息地と密接に関連する。同時期に複数県で死骸+象牙消失というパターンは、組織的な密猟グループが活動している可能性を示す重大な兆候。
特別作戦部隊「ファヤースー」、虎将と呼ばれる密猟取締エリート
タイ国立公園野生動物植物保護局の特別作戦部隊「ファヤースー(พญาเสือ / 虎将の意味)」は、密猟・違法伐採の取締専門部隊。主な特徴は以下の通り。
今回のアタポン長官の指示で、ファヤースーが現地調査・捜査を主導する模様。
野生象の生息状況、タイの保護政策
タイの野生象は、国の象徴(国獣)として保護対象。現在の生息状況は以下の通り。
- 全国野生象推定数: 約3,000-4,000頭
- 主要生息地: カオヤイ・カオパヌアン・カオサミ・カオフロックロード等の国立公園
- 飼育象推定数: 約3,800頭(観光・労働用)
- 保護機関: 国立公園野生動物植物保護局、タイ象保護財団
タイ政府は野生象保護に積極的で、密猟は厳しく取り締まっている。象牙の国際取引はワシントン条約(CITES)で禁止されている。
象牙密輸の闇市場、アジア大陸での需要
象牙の闇市場は、依然として世界的に活発。タイは過去にも象牙の中継地として国際的に注目されてきた。需要の主な源は以下の通り。
- 中国大陸: 工芸品・装飾品・伝統医薬の素材として
- ベトナム: 中国への密輸中継地
- 中東諸国: 装飾品・印鑑用
- 欧米富裕層: コレクター需要
国際的な象牙取引の取締強化により、闇市場価格は依然として高水準を維持。1キロ当たり数千ドルの取引価格で、密猟の経済的インセンティブが残る。
タイの「象観光」と密猟、矛盾する2つの顔
タイは「象観光」が観光の柱の一つで、年間数百万人の観光客が象との触れ合いを楽しむ。同時に、野生象の密猟が後を絶たない矛盾を抱えている。観光産業と保護政策のバランスは以下のような構造。
今回の事件は、保護政策の隙間を狙った密猟者の手口を改めて示している。
死亡原因の調査、3つの可能性
野生象が骨だけになるまで放置されていた理由として、以下の3つの可能性が考えられる。
- 自然死後の盗掘: 病気・老衰・飢餓で自然死した個体の象牙を後から盗掘
- 直接的な密猟: 銃撃・毒殺等で意図的に殺害し、象牙を持ち去り
- 偶発的な事故後の盗掘: 自動車・列車事故等で死亡した個体からの盗掘
ファヤースー部隊と警察は、現場の状況証拠(銃弾跡、毒物反応、骨の損傷パターン)を慎重に分析し、原因を特定する。
過去のタイ象密猟事件、闇ルートの全貌
- 2021年: カオパヌアン国立公園で2頭密殺、容疑者5人逮捕
- 2022年: チャンタブリで象牙20kg押収、密輸ネットワーク摘発
- 2023年: カンチャナブリで密猟拠点摘発、武器・象牙押収
- 2024年: カオヤイで密猟未遂、容疑者3人逮捕
- 2025年: 国際密輸組織との連携摘発、ベトナム人逮捕
タイ警察と国際機関の連携で、密猟組織の摘発は進んでいるが、闇市場の需要が続く限り、完全な根絶は難しい。
「持ち出した人は速やかに返却を」、当局のメッセージ
カオヤイ国立公園当局は、象牙を持ち去った人物に対して「速やかに返却するように」と公式メッセージを発出。返却すれば刑事処罰の軽減もあり得るとの示唆を含む。
タイの野生動物保護法では、象牙の所持・売買は厳しく規制されており、違反した場合は以下の罰則が課される。
- 最高で5年の懲役
- 100万バーツの罰金
- 押収・没収
当局は、密猟・盗掘の連鎖を断つために、現場での情報提供と協力を呼びかけている。
国際社会の関心、CITES加盟国としての責任
タイは、ワシントン条約(CITES)の加盟国として、象牙の国際取引禁止を遵守する義務を負う。今回の事件は、以下のような国際的な視点で注目される。
- CITES監視機関による監査対象
- 国際野生動物保護団体(WWF、TRAFFIC等)の関心
- 中国・ベトナム等の象牙消費国との連携取締
- 国際刑事警察Interpolとの情報共有
タイ政府は、国際社会の信頼維持のためにも、今回の事件の徹底捜査と再発防止策の強化が求められている。



