タイ運輸省(กระทรวงคมนาคม)とタイ国政府観光庁(TAT: การท่องเที่ยวแห่งประเทศไทย)、複数の航空会社が連携して、地方都市7空港を対象とした「飛行+宿泊+食事」ワンパッケージ型の観光促進プログラムを2026年5月25日に発表した。パイロット対象は、ナコンシータンマラート、ランパーン、メーホンソン、ホアヒン、ロイエット、ナーン、プレーの7空港。参加航空会社はEZY Airlines、Nok Airが確認済みで、他社にも招待中。とくにホアヒンは「ウェルネス・ハブ」と位置付け、医療センターと連携した長期滞在型の富裕外国人観光客を誘致する戦略を打ち出した。副運輸大臣のパッタラポン・パッタプラスィット氏は「地方都市路線の促進、旅行需要の刺激、コミュニティへの収入分配」を3本柱の目標として説明した。
7空港、北部・東北部・南部の地方拠点
パイロット対象となる7空港は、タイ国内の地方観光地に位置する中規模空港。各空港の特徴は以下の通り。
- ナコンシータンマラート(จ.นครศรีธรรมราช / 南部): タイ南部最古の都市の一つ、寺院・歴史遺跡が豊富
- ランパーン(จ.ลำปาง / 北部): 馬車の街として知られる文化観光地
- メーホンソン(จ.แม่ฮ่องสอน / 北部山岳): 山岳少数民族・ラフ族の文化、霧の山々
- ホアヒン(จ.ประจวบคีรีขันธ์ / 南部リゾート): 王室避暑地、ビーチ+ゴルフ+ウェルネス
- ロイエット(จ.ร้อยเอ็ด / 東北部): イサーン地方の文化観光、シルク・布の名産
- ナーン(จ.น่าน / 北部): ラオス国境沿いの隠れた古都
- プレー(จ.แพร่ / 北部): 古い木造寺院・タイ伝統的建築
これらは「セカンダリー・シティ(secondary city)」と呼ばれ、バンコク・チェンマイ・プーケットといった「プライマリー・シティ」の補完として観光ルートに組み込まれてきた。
パッケージ内容、航空券+宿泊+食事をワンセットで
新プログラムの中核は、観光客が個別に予約する手間を省く「ワンパッケージ型」販売モデル。航空会社・ホテル・レストランが連携し、以下の要素を1セットで販売する。
- 航空券(往復、対象7空港行き)
- 宿泊(現地ホテル、複数日)
- 食事(レストラン提携、朝食・夕食等)
具体的なホテル・レストランパートナーは、航空会社との協議で順次決まる予定。タイ国内航空業界では、低価格帯のLCC型予約と、ラグジュアリー型パッケージの両方が想定される。
EZY Airlines+Nok Air参加、他航空会社にも招待
参加航空会社として現時点で確認されているのは2社。
- EZY Airlines: タイ国内LCC、地方路線中心の運航
- Nok Air: タイ航空(THAI)系列のLCC、ドンムアン拠点
タイ運輸省は、Thai AirAsia、Thai Lion Air、Bangkok Airways、Thai Smileなどの他社にも参加招待を出している。航空会社の連携が広がれば、対象路線・対象期間・対象料金帯が拡大する見通し。
ホアヒン、ウェルネス・ハブ構想
7空港の中でも特に注目される構想が、ホアヒンの「ウェルネス・ハブ(Wellness Hub)」化。タイ運輸省はホアヒンを以下の特性を持つ拠点と位置付ける。
- 王室避暑地としての歴史と格式
- ビーチ+ゴルフ+伝統的ホテルのリゾート資源
- バンコクから車で約3時間、空路で30分のアクセス
- 富裕層・退職者・長期滞在希望者にとっての魅力
ウェルネス・ハブ化の核心は、空港サービスと医療センターの連携。タイのメディカル・ツーリズム(医療観光)は、心臓・整形外科・歯科・人工授精・美容外科などで国際的に評価されており、ホアヒンに高度医療施設と長期滞在型ヘルスケアリゾートを組み合わせる構想。「治療+健康志向のリラクゼーション(treatment + health-focused relaxation)」をブランドメッセージとして打ち出す。
副運輸大臣パッタラポン氏、3本柱の目標
プログラム発表時、副運輸大臣のパッタラポン・パッタプラスィット氏(พัทธพงศ์ พัฒน์ประสิทธิ์ / Deputy Transport Minister Phattrapong Patprasit)は、以下の3本柱の目標を強調した。
- 地方都市路線(secondary city route)の促進
- 旅行需要の刺激
- コミュニティへの収入分配(地方経済の活性化)
タイの観光業はGDPの約18-20%を占める主要産業だが、その大半がバンコク・プーケット・パタヤ・チェンマイの「プライマリー・シティ」に集中している。地方都市への観光客誘導は、経済の地理的偏りを是正する政策目標として、歴代政権が取り組んできたテーマ。
在留邦人にも有用、地方周遊のチャンス
タイ在留邦人にとって、本プログラムは地方都市への旅行ハードルを下げる機会となる。バンコクから北部のメーホンソン、ナーン、プレー、または東北部のロイエット、南部のナコンシータンマラートへ、航空会社の通常運賃で個別予約するよりも、パッケージ価格が割安になる可能性が高い。家族旅行・友人旅行・趣味の旅行(寺院巡り、温泉、田舎体験、ローカル料理)などで、新たな選択肢が増える形となる。
メディカル・ツーリズム、年間300万人規模
タイのメディカル・ツーリズムは、年間訪問者数が約300万人、医療収入は2,500億バーツ(約1兆1,500億円)規模と推定されており、世界のメディカル・ツーリズム市場で上位の地位を占める。バムルンラード病院、サミティウェート病院、バンコク病院などの私立大手病院が中心で、欧米・中東・日本・中国からの患者を受け入れている。ホアヒンを新たなウェルネス・ハブとして整備すれば、首都圏に集中していた医療観光客の一部を地方都市に分散させる効果が期待される。
