タイ最南端パッターニー県ヤラン郡で2026年5月25日午後3時半ごろ、ヒジャブを着けて女性に変装した4人組の犯人がオートバイ2台に分乗して現れ、ヤリン警察署所属のアドゥン警部補に銃撃を加え負傷させた。同時に車内で乳児を抱いて夫を待っていた警部補の妻ファティーマさん(プラサーン・ウィタヤ・ムリニティ学校の女性教師)が複数の銃弾を浴び、車内で死亡した。妻が抱いていた乳児は生命に別状はないが負傷した。事件現場は、もう一人の子供の下校を待っている学校前。タイ南部国境治安機構(ISOC)第4管区先遣隊は「非人道的かつ残忍な行為」と非難声明を出し、軍と警察が現場周辺を包囲し検問を設置して犯人を追跡している。
真昼の学校前で銃撃、女装の犯人がバイク2台で接近
事件はパッターニー県ヤラン郡のプラサーン・ウィタヤ・ムリニティ学校(プラサーン・ヴィタヤ・ムニニティ・スクール)近くで発生した。タイ警察の発表によると、5月25日午後3時30分頃、4人組の犯人がヒジャブを身にまとい女性に変装した姿でオートバイ2台に分乗して現れ、駐車中の車両に向けて銃を発射した。撃たれたのはヤリン警察署所属のアドゥン警部補(ด.ต.อดุลย์)で、銃弾を浴びて負傷した。
車内の妻が乳児を抱いたまま死亡、教師として勤務
警部補の妻ファティーマさん(นางฟาตีเม๊าะ)はプラサーン・ウィタヤ・ムリニティ学校の女性教師で、事件当時は車内で乳児を抱きながら夫を待っていた。子供のうちもう一人を学校から迎えに行く前の待機時間で、午後の下校時刻に合わせて学校前に駐車していた。犯人の銃撃により、車内で複数の銃弾を受け、その場で死亡が確認された。腕に抱いていた乳児も負傷し、病院に搬送された。
ISOC第4管区先遣隊「非人道的かつ残忍」と非難
タイ南部国境治安機構(ISOC: กองอำนวยการรักษาความมั่นคงภายในภาค 4 ส่วนหน้า)の第4管区先遣隊は事件発生後すぐに公式声明を発表し、「真昼の学校前で女性教師を乳児ごと射殺するという、人間性を欠く残忍極まる行為」と強く非難した。ISOC第4管区は、タイ南部国境3県(パッターニー・ヤラー・ナラーティワート)とソンクラー県4郡の治安維持を担う軍直轄の特別治安機構で、2004年以降のタイ南部国境問題への対応を統括する。
軍警察が周辺を包囲、検問設置で犯人追跡
事件発生後、犯人は逃走した。タイ警察は負傷した警部補と乳児を病院に搬送するとともに、ヤラン郡周辺に治安部隊を展開し、エリアを包囲、複数の検問所を設置して犯人の追跡と再犯防止を進めている。プラサーン・ウィタヤ・ムリニティ学校周辺は事件直後から立入規制が敷かれ、現場検証と防犯カメラ映像の確認が同時並行で進められている。捜査当局は逃走経路と犯人の素性の特定を急いでいる。
学校前の襲撃、教師と警察官を狙ったテロ手口
パッターニー県ヤラン郡を含むタイ南部国境地域では、2004年以降、分離独立を求める武装勢力(BRN: バリサン・レボリューシ・ナショナル等)による襲撃事件が断続的に発生してきた。特に教師・警察官・軍人といった国家公務員を標的とした攻撃は、タイ南部の治安問題の典型的な手口とされる。今回の事件のように、夫が警察官、妻が教師という二人が同時に標的になり、子供を抱えた状態で殺害されるケースは、タイ社会に大きな衝撃を与える事案として国内メディアに大きく報じられている。
ヒジャブで女性に変装、犯行手口の異例性
今回の事件で特異なのは、犯人4人がヒジャブを着けて女性に変装して接近した点。タイ南部国境地域はマレー系イスラム教徒が多数を占め、ヒジャブを着けた女性は日常風景の一部であり、警戒の対象から外れやすい服装でもある。犯人グループはこの社会的死角を利用して、真昼の学校前で目立たずに警察官夫婦に接近することに成功した形になる。捜査当局は、犯行手口の周到さから組織的な襲撃計画があったとみて捜査を進めている。



