タイ空港公団(AOT)が2026年6月20日から実施を予定する国際旅客サービス料(PSC)の大幅引き上げ計画について、AirAsia創業者・CEOのトニー・フェルナンデス氏が2026年5月24日、再び強い反対の声を上げ、実施を最低1年延期するよう公式要請した。具体的な引き上げ幅は現行の730バーツから1,120バーツへの+53.4%で、当初の予想より大幅な値上げ。フェルナンデス氏は航空業界が「燃料コストの急騰+原油価格2月末比+53%上昇」という二重の圧力下にあり、燃料が運営コストの60%(以前は30-35%)を占める状況で、PSC引き上げは航空会社+乗客双方への打撃となると警告した。バンコクエアウェイズが既に主要路線で減便、タイ・エアアジアも平均運賃を2,700バーツに引き上げて運航量を12%削減するなど、業界全体が苦境に直面している中での提言。5月22日の前報「AirAsia創業者がタイ空港使用料引き上げ案に反対、タイ観光業に災害と警告」の具体的フォローアップとなる。
53.4%引き上げの中身
タイ空港公団(AOT)が予定する国際旅客サービス料(PSC)引き上げの具体的な内容が明らかになった。
引き上げの詳細を整理すると、現行料金は1人あたり730バーツ、新料金は1,120バーツ、引き上げ幅は390バーツ(+53.4%)、対象は国際線出発便の全旅客、実施予定日は2026年6月20日、適用空港はAOTが運営するスワンナプーム・ドンムアン・チェンマイ・プーケット等主要6空港、というもの。
390バーツの追加負担を1人あたり計算すると、約1,800円(1B=4.6円換算)。家族4人の海外旅行であれば、1,560バーツ(約7,200円)の追加コストとなる。LCC利用層の家計負担としては大きな金額。
燃料コスト60%という業界の苦境
フェルナンデス氏が強調したのは、航空業界の収益構造が劇的に悪化している現状。
業界のコスト構造の変化として、現在は燃料が運営コストの60%(以前は30-35%)、原油価格が2月末以降53%上昇、ジェット燃料価格の高止まり継続、IEA(国際エネルギー機関)が中東情勢悪化で更なる上昇を警告、為替変動でリースコストも増加、整備・人件費・空港使用料の上昇圧力、というもの。
「燃料60%」という数字は、航空会社の経営余裕がほぼゼロに近づいている状態を示す。残り40%で人件費・整備費・空港使用料・機材リース料・保険料・チケット販売手数料を賄う構造で、これにPSC引き上げ分を上乗せされると、運賃に転嫁するか赤字を増やすかの二択になる。
タイ航空業界の苦境例
フェルナンデス氏は他社の苦境例も具体的に指摘した。
主な業界事例として、バンコクエアウェイズが主要路線で減便、タイ・エアアジアの平均運賃が2,700バーツに引き上げ+運航量12%削減、タイ国際航空が燃料危機で5月運休7路線(日本線最長10月まで)、バンコクエア+ノックエア+タイ・ライオン・エアも値上げ圧力、フルキャリアもLCCも一様にコスト増を吸収しきれない状況、というもの。
タイ航空業界全体で「コストショックからまだ回復していない」という状態で、PSC引き上げを実施すれば、業界に「ダブルパンチ」「死の一撃」(disaster)を与えるとの認識が広がっている。
フェルナンデス氏の対案
PSC引き上げ反対だけでなく、フェルナンデス氏は建設的な対案も提示した。
主な提案内容として、PSC引き上げ実施を最低1年延期、航空会社タイプ別の柔軟な料金体系(LCC・フルキャリアで異なる料率)、空港カテゴリー別の料金差別化(国際ハブ空港と地方空港で異なる料率)、AOT側の他収入源開発(カーゴ・整備事業・リテール・不動産)、長期的な空港運営効率化、というもの。
「1年延期」という具体的な期限提示は、5月22日の発言「実施を最低1年延期」と一貫しており、フェルナンデス氏のスタンスが明確化している。
AOT(タイ空港公団)の立場
AOT側は、PSC引き上げの必要性として空港インフラ整備・拡張資金確保、スワンナプーム第3滑走路の建設、ドンムアン国際空港のターミナル拡張、地方空港のアップグレード(チェンライ・クラビ・ハットヤイ等)、空港の安全・セキュリティ強化、デジタル化・自動化投資、を挙げている。
スワンナプームは現在年間旅客処理能力6,500万人だが、実際の旅客数が8,000万人を超え過密状態。第3滑走路の建設は急務とされる。AOTの財源確保の必要性とフェルナンデス氏の業界保護論は、それぞれに正当性がある対立構図。
6月20日実施の意味
実施予定日の6月20日は、タイの「観光オフシーズン入り」のタイミング。
業界のシーズン構造として、ハイシーズンは11月-4月(欧米・東アジアからの観光客集中)、ローシーズンは5月-10月(雨季・南半球の冬で東南アジア旅行が低調)、6月-8月は最ローシーズン、観光客数も運賃も底値、というもの。
PSC引き上げをローシーズン入りに合わせる決定は、AOTにとって「観光繁忙期前に新料金を定着させる」狙いがあるとみられる。だが、業界からは「最も収益が出ない時期に追加負担を強いる」と批判される構図。
続報
AOTとタイ運輸省の正式判断、フェルナンデス氏+業界団体の追加要請、6月20日実施の延期可能性、新料金1,120バーツの最終確定、他空港利用料金との比較などは今後の続報で明らかになる見通し。


