タイ南部クラビ県メアン郡で2026年5月1日深夜、地方自治体OBT(タンボン管理組織)の町長が自身の就任祝賀パーティーで雇ったバンドに「深夜2時まで演奏しろ、断れば未払い」と要求し、断った女性ボーカルと乱闘になった事件がSNSで炎上している。歌手側は身体暴力と機材破壊、部下による発砲威嚇まであったと主張、町長側は「事実と異なる」と反論し説明が食い違っている。
経緯はFacebookユーザーのナトリカ・デチャクル氏が投稿した動画で広まった。バンドは事前に午後7時から24時までの演奏契約で雇われており、24時を過ぎてからアンコールとして最後の1曲を演奏中だった。そのタイミングで町長と取り巻きがステージ前に押しかけ、「2時まで演奏しなければ金は払わない」と要求して大声で詰め寄った。
バンドのリードボーカル「ノンナーム」さんは取材に対し、「翌日も別の現場の仕事があり、これ以上の延長は無理だと町長に手を合わせて謝罪した。しかし町長に押されたため、私も押し返してしまい、それで揉み合いになった」と説明した。動画には町長側が機材を壊す様子と、取り巻きが発砲して場を威嚇する場面も収められていたという。一方で町長側は「歌手の主張は事実と違う」と反論しており、警察への被害届と捜査の有無は現時点で明確になっていない。
タイの地方政治では、町長や郡長クラスの首長が選挙後の祝賀パーティーで地元の人気バンドや歌手を呼ぶのが恒例となっている。今回はその祝賀の場で「契約時間延長を金で迫る」「断れば暴力的に振る舞う」という行為が動画で全国に拡散したことで、地方権力者の傲慢を象徴する事案として議論になっている。
過去にもタイの地方政治家が酒席で芸能人や音楽家を圧迫する事件は繰り返し報じられてきた。SNS時代に入ってからは、現場の動画が即座に全国・世界に拡散されるため、ハイソ層・権力者の振る舞いが「証拠付き」で社会的批判を浴びるケースが増えている。今回の事件もFacebook投稿から数時間でタイ語SNSのトレンド上位に上がった。
在タイ日本人にとっても、ライブハウスやイベント業に関わるバンド・MC・カメラマンが似た契約条件のトラブルに巻き込まれる可能性はある。タイで深夜まで及ぶ宴席業務を引き受ける際は、契約終了時刻の延長条件と「払わない」と脅されたときの対応を事前に書面で取り決めておくのが安全だ。