タイの社会保険局(สปส./SSO)が2026年5月1日から、加入者向け歯科サービスを大幅に拡充した。最大の変更点は親知らず抜歯(ผ่าฟันคุด)が虫歯治療の年間予算枠から独立し、1本あたり最大2,500バーツが別枠で給付されるようになったこと、そして全顎インプラント手術が初めて社会保険でカバーされるようになったことだ。これまで「歯科は補助が薄い」と言われてきた制度が、実用レベルの医療サービスへと進化した形だ。
具体的な拡充内容は4点ある。第1に、親知らず抜歯は1本最大2,500バーツが新たな独立予算として給付される。これまでは年間900〜1,500バーツの「歯科治療予算枠」内で抜歯費用を捻出する必要があり、虫歯治療と予算を取り合う構造だったが、5月以降は別枠扱いとなり、1本ずつ最大2,500バーツまで使える。
第2に、全顎インプラント(ฝังรากฟันเทียม)が新規対象。全歯を失い取り外し義歯では生活が困難な加入者向けに、インプラント手術代17,500バーツ、インプラント本体(チタン製)3,300バーツが給付される。術後のフォローアップ診察も継続的に保険でカバーされる。タイの民間病院・歯科クリニックでは全顎インプラントは1本3万〜6万バーツ規模で、社会保険でこれだけ広範にカバーされるのは画期的な変更となる。
第3に、入れ歯(ฟันปลอม)の給付額が増額された。種類と本数に応じて1,500〜6,000バーツまで給付され、加えて入れ歯の修理は1回900バーツの新給付が追加された。第4に、利用条件はこれまでと同じく「加入から3ヶ月以上の保険料を15ヶ月以内に支払っている加入者」が対象で、加入終了後6ヶ月以内も適用される。
在タイ日本人で社会保険に加入している駐在員・現地採用者・経営者にとっては、歯科治療の自己負担が大幅に減る朗報だ。バンコクのバムラングラード病院・サミティベート病院・シリラート病院をはじめとする多くの私立・公立病院が社会保険歯科の指定機関となっており、契約クリニックでは「立替なし」で直接給付される。契約外の歯科に行った場合も領収書を社会保険局に提出すれば後日還付される。日系企業の人事・労務担当者は5月以降、加入者から歯科利用に関する問い合わせが増える見通しで、制度内容の社内周知が必要になる。