英国オンライン小売大手ASOSの共同創業者だった58歳の英国人実業家クエンティン・グリフィス氏が、2026年2月9日にパタヤの17階建てアパートのバルコニーから転落死したことを巡り、死亡から数日以内にグリフィス氏のビットコイン約400万米ドル相当が3つの別取引で送金され消失したことが、5月1日のチョンブリ地裁での公聴会で明らかになった。タイ人妻と長男との親権争いを背景にした複雑な事件として注目を集めている。
グリフィス氏は1999年に英国でASOSを共同創業した先駆者の1人で、26年にわたりオンラインファッション業界で活動してきた。パタヤ警察によると、転落現場では暴行の痕跡は見つかっておらず、当初は事故または自殺として処理する方向だったが、暗号通貨消失の発覚で捜査が継続している。
ビットコインは死亡後の数日間に3つの異なる取引で「謎の宛先」へ送金された。送金先のウォレット位置や、誰が秘密鍵にアクセスしたかは現時点で公開されていない。グリフィス氏の長男ジョエル氏が消失をパタヤ警察に報告し、これを受けて公聴会で扱われることとなった。弁護側はジョエル氏に対し、「正確な消失金額をどうやって把握したのか」「ウォレットへのアクセス権を持っていたか」と疑問を呈した。
家族関係では、グリフィス氏とタイ人第二妻プロイ・クリンシンタナクンさんは死亡前に疎遠になっており、グリフィス氏はパタヤで別のガールフレンドと暮らしていた。プロイさん夫妻にはバンコクで暮らす子供たちがおり、長男ジョエル氏は彼らを英国へ連れ戻すよう主張する一方で、プロイさんはタイ国内での親権取得を申請している。チョンブリ地裁ではこの親権問題と暗号通貨消失の双方が議論されている。
報道によると、グリフィス氏は2025年1月にフライト中に拘束されており、土地およびシェア売却に関わる文書偽造疑惑で求刑18ヶ月の刑事手続きが進行中だった。死亡時点で英国とタイにまたがる複数の法的争いを抱えていたことになる。
タイのパタヤは英国人富裕層の長期滞在地として人気が高い一方で、ハイライズコンドミニアムからの転落事故・殺人疑惑事件は近年も繰り返し報じられている。今回の事件は、暗号通貨の追跡技術と国境を越えた相続・親権の問題を絡めた複雑な構図で、結果次第ではタイの外国人居住者の遺産処理慣行にも影響を与える可能性がある。