タイ南部パッタルン県で、地元警察捜査班所属の伍長(ดาบตำรวจ)が、脳障害のある20歳の青年をハイロー(サイコロ賭博)に誘い込み、自身が「親方」(ディーラー)役を務めて10万バーツ以上を負けさせる事件が発生した。被害者の家族は2026年4月、警官のやり方に強く抗議し、地元メディアに告発した。
被害者ピーラサック氏(20)は、継続的な服薬が必要な脳障害を抱えており、判断力が弱い状態にある。両親(ユパポーン氏46、タナサック氏53)によると、ある夜息子から電話があり「ハイローで負けた、お金がない、金の首飾りも取られた、迎えに来てほしい」という連絡を受けたという。送られてきた写真には警官の自宅で行われていた賭場の様子が写っていた。
賭場は被害者宅からわずか100メートル離れた警官の自宅で開かれていた。警官自身が「親方」として胴元を務め、勝負ごとに被害者から現金を吸い上げ、最終的には金の首飾り(重さ2バーツ=約30g相当)まで担保として没収していた。総額は10万バーツを超えたとされる。
母親は息子の電話を受けて急ぎ現場に駆けつけ、警官に「金の首飾りを5万バーツで取り戻したい」と交渉を持ちかけた。警官側はこの交渉に応じる態度を示したが、家族側は「警察の身分でありながら脳障害のある若者を賭博に誘い込むこと自体が許せない」として、首飾りの返還だけでなく警官の処分まで求めて告発に踏み切った。
タイ国内では地元警察が違法賭博と関与して摘発される事例が散発しており、ハイローはその代表的な賭博形態である。日本人の感覚では「警察官が自宅で賭博場を開き、脳障害のある近所の青年を誘い込む」状況は想像の外にあるが、タイの地方都市では警察の私的な権力濫用が長年の課題として残っており、今回の事件もその構図を改めて社会に問いかけている。